第124話 決着
「ハァ……ハァ……」
レイカはその場に、糸の切れた人形のようにぺたりと座り込んだ。
次の瞬間、レイカを包んでいた闇の魔力が煙のように消え、夜気の中へ溶けていく。
目の前の地面は、先ほど放った闇魔法の余波で大きく抉れ、黒く焦げていた。
「……ごめんね、ペッタンコ」
ぽたりと涙が頬を伝い、焼けた大地に吸い込まれていく。
「ペッタンコ……僕の人生で初めての親友だったんだよ……また一緒にお祭りに行って……普通の女の子みたいに遊んで、笑い合いたかったのに……」
レイカは震える手で涙を拭い、ゆっくりと立ち上がる。
その瞳には、もう迷いはなかった。
「……悲しむのは後だね。みんなを助けなきゃ」
振り向いた先。
アルガンド城のバルコニーに立つ皇帝を、レイカは鋭く睨みつける。
「今すぐ、そっちに行くから!」
足元の石畳を踏みしめ、城へと歩みを進める。
(カエデ、リコ、コアネール……無事かな。三人には本当に助けられた。ずっと四人で旅していくのも悪くないなって、少しだけ思ったよ)
風が、焦げた大地を撫でていく。
レイカは目を細め、歩を止めない。
(サイちゃん……また会えた時は本当に嬉しかった。本当のお姉ちゃんみたいで、大好き。どうか無事でいて)
そして、城門の前に辿り着く。
(ロイロイ……雪山の時も、今日も、ピンチのたびに助けに来てくれた。白馬に乗った王子様って言うと照れるけど……カッコいい男の子だと思ってるよ。それと……ペッタンコのこと、ちゃんと話さなきゃ)
両手を門にかけ、ゆっくりと力を込める。
重厚な鉄の扉が、わずかに軋みを上げた。
そのときだった。
「……ま……って……」
声が、背後から聞こえた。
レイカの全身が硬直する。
まるで時間が止まったように、振り返ることができない。
「そ……そんな……ありえない……」
震える手を門から離し、恐る恐る振り向いた。
そこには、全身から血を流し、虚ろな瞳で立ち尽くすリアの姿があった。
「あの闇魔法を……まともに受けて、立ってるなんて……」
「……リア……は……勝た……ないと……」
今にも消え入りそうな声。
血に濡れた足を引きずりながら、リアはレイカに向かって歩き出す。
ズザ……ズザ……と、地面を擦る足音が夜に響いた。
「これが……帝国軍最強の……ジョーカーの力……」
レイカは冷や汗を垂らし、後退ろうとするが、足に力が入らない。
視界がぐらりと揺れる。
「くっ……魔力切れ……?ハァ……ハァ……」
両手を地に付き、必死に身体を支える。
(ダ、ダメだ……心臓の魔力すら全て使った……もうホントに動けない……)
レイカは逃げようとするが、身体が動かない。
そして、リアの虚ろな瞳が、真っ直ぐレイカを射抜いた。
「……リア……は平和のため……魔王を……たおす……」
風の刃がリアの右手に生まれる。
その風が、リアの血に染まった髪と服を揺らす。
「ヤ、ヤバい……僕は……みんなのために負けられないのに……」
レイカは這うように逃げようとするが、すぐに追いつかれる。
背中に、殺気が突き刺さる。
バルコニーの上で、皇帝が笑った。
「ハハハハ!! よくやったぞ、ジョーカー! そのまま殺してしまえ!」
リアの唇が震える。
「……にん……む……魔王を……倒せば……平和が……」
「ペッタンコ……そこまで……僕を……」
リアは風刃を高く掲げた。
レイカは、静かに目を閉じる。
「僕の……負け……」
(カエデ、リコ、コアネール、サイちゃん、ロイロイ……助けてもらったのに……勝てなかった。ごめん……)
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