第104話 魔王の怒り
レイカ、カエデ、リコ、コアネールの4人はオーブロを後にし、西へと向かっていた。
「へー、コアネールって弟がいるんだ」
「そうですわ、ただ2年前にサンベルスを出て帝国軍で働いてますの。全く、本来ならあの子がサンベルスの王子となるはずだったのに、自由なことですわ」
レイカとコアネールは隣り合って話していた。
「ホントにね、僕だって本来はお兄様が魔王になるはずだったのに」
「お互い苦労してますわね」
「ホントだよ、男ってホントに勝手」
レイカはムスっとした顔で言った。
「まあ、私はあの子が元気でやっているならそれでいいですけど」
少し口角を上げながら言うコアネール。
「コアネールの弟ってどんな子なの?」
疑問に思い、聞くカエデ。
「優秀な子でしたわね、私の1歳年下になりますが成績は常に学年1位、運動神経も抜群に良かったですの」
「凄いね弟くん」
「ですが可哀想なことに天才の私の弟だったが故に私と比べられて大変だったと思いますわ」
「そういうこと自分で言うんだ......」
「まあ今の強さは私もわからないですけど、とにかく腕っぷしや力の強さじゃない部分があの子は秀でていますの」
「そうなんですね......コアネールさんの弟さん会ってみたいです」
リコはコアネールの弟を想像しながら言った。
「え”......」
「何でそんな嫌そうな顔するんですか!?」
「何かリコと会わすと悪影響がありそうですの」
「ガビーン!!」
「ちょっと待ってみんな!!」
レイカが周りをキョロキョロしながらそう叫んだ。
「どうしたのレイカ?」
「いや......ちょっと待って」
レイカはじーっと遠くを見た。
「間違いない!ここ魔王城の近所の森だよ!!」
「えっ!?って言うことはもうそんな西まで来たってことですか!?」
「そうだよ!!いつの間にかこんなとこまで来てたんだ!!」
レイカは走り出す。
「ま、待ちなさいよ!そんな急ぐと危ないわよ!」
それを見て、カエデ、リコ、コアネールも走り出した。
「こ、これは......」
レイカ達は魔王城に到着した。
魔王城はカードが襲撃してきた後で、半壊し、ボロボロになっていた。
「明らかに誰かに破壊された後ね......」
「そ、そんな!!魔王城のみんなは!?」
レイカは瓦礫を掻き分け、魔王城の中に入る。
「レ、レイカ!!崩れかけてるから危ないわよ!!」
カエデはレイカを追いかける。
それを見て、リコとコアネールも追いかけた。
「一体何が!?エントランスもこんなになって......帝国の刺客が来たのか!?」
レイカは涙を流す。
「レイカ、落ち着きなさい」
カエデはレイカの肩に手を置いた。
「離して!!みんなはどこ!?」
レイカはカエデの手を振り払い、もっと奥へ走る。
魔王城を見渡しても、影一つ見当たらなかった。
「みんなー!!あっ......」
レイカは瓦礫に躓き、転ぶ。
転んだ地面には血が付いていた。
「そ、そんな......」
「レ、レイカ!大丈夫!?」
「う.....うう......誰がこんなこと......」
レイカは両手を手につき、泣き始める。
「僕の家が......家族が......僕がいない間に......」
レイカからは闇魔法が漏れ始めた。
「こんなことした奴、絶対許さない!!!」
次第に漏れてくる闇魔法は大きくなり、禍々しい渦を作り出した。
「レイカ!!悲しいのはわかるけど落ち着きなさい!!」
カエデはレイカの肩を掴む。
「うるさい!!離して!!」
レイカが叫ぶと、闇魔法がカエデを突き飛ばした。
「あっ!!」
吹き飛ばされ、瓦礫にぶつかるカエデ。
「カ、カエデさん!!大丈夫ですか!?」
「私は良いからレイカを止めて!正気じゃなくなってる!!」
「は、はい!!」
「クソッ!!絶対……絶対許さない!!」
レイカは両手で地面を殴った。
それを見て、リコとコアネールは左右からレイカの腕を掴む。
「レイカちゃん!落ち着いて!!」
「冷静になりなさいですの!!」
「止めて!!離してよ!!」
レイカは勢いよく腕を振り払った。
「「ああっ!!」」
ドゴーン!!
振り払った勢いでリコとコアネールは吹き飛ばされ、瓦礫に突っ込んだ。
「こんなことになるなんて......元はと言えば僕がお兄様を追って魔王城を出たから......僕のせいだ......こんなの嫌だ......」
レイカからはさらに禍々しい闇魔法が漏れ出した。
それはさらに巨大な闇魔法の渦を形成する。
その渦はどんどん大きくなり、レイカを覆った。
「レイカ......」
カエデは瓦礫を押しのけ、立ち上がった。
そして、蹲るレイカを見て、歩き出す。
「くっ!!何て魔力なの?」
カエデは闇魔法の風圧を受けながらも、何とかレイカに向かって進む。
「嫌だ......また誰かがいなくなるなんて......嫌だ......」
「レイカ!!!落ち着きなさい!!!」
カエデはレイカの肩に手を置きながら、そう叫んだ。
「嫌だ……みんな……いなくならないで……」
バチンッ!!
カエデはレイカの頬を平手打ちした。
「いた......」
その瞬間、闇魔法は勢いを無くしていく。
「レイカ!!立ちなさい!!」
カエデは蹲り泣くレイカを持ち上げ、立たせた。
「レイカ!!悲しいのはわかる!!けどこんなときこそ冷静になりなさい!!リコとコアネールにも手を上げて、余計に大切な人達を無くすつもりなの!?」
「カエデ......」
「貴方は魔王城のリーダーでしょ!?貴方が正気を失ってどうするの!?貴方のやるべきことは何!?怒って泣いて蹲ることじゃないでしょ!!」
カエデはレイカに抱き着いた。
「う、うう......カエデ......」
レイカもカエデに抱き着いた。
その瞬間、漏れ出していた闇魔法は消失した。
「大丈夫よ、私達が側にいるから、何があっても友達だから」
「カエデ......ごめんなさい......ありがとう......」
レイカは涙を流しながらカエデの胸に顔を埋める。
「よしよし、手のかかる子なんだから」
カエデはレイカの頭を撫でた。
「いてて......どうやら収まったようですね」
「カエデさん、流石ですの」
瓦礫に飛ばされたリコとコアネールも立ち上がり、服に付いた埃を叩きながらレイカとカエデに近づいた。
それを見て、駆け寄るレイカ。
「リコ、コアネール、ごめん、ケガはない?」
「大丈夫ですよ!こう見えて頑丈ですから!」
「リコはどう見ても頑丈ですの」
「コアネールさんも見かけによらず結構タフですよね」
「良かった......カエデもリコもコアネールもありがとう」
レイカは涙を拭いた。
「ホント、心配ばかりかける子なんだから」
カエデは安心して息を付く。
それを見て、レイカも深呼吸をして口を開いた。
「......冷静になって考えてみた。この惨状で一人も死傷者がこの場にいないのは不自然だね」
「そうね、普通に考えると連れて行かれたか、もうすでにどこかに避難したか......」
「とにかく情報が必要だね、まずは城下町に行って色々聞いてくる」
「魔王様」
「へ?」
レイカの背後からレイカを呼ぶ声が聞こえた。
レイカが振り向くと、そこにはサイの姿があった。
「サ、サイちゃん!?」
「魔王様!!やっと会えた!!」
サイは瓦礫を掻き分け、レイカの方へ歩く。
「サ、サ、サ、サイちゃぁぁぁぁん!!!」
ガバッ!!
走ってサイに抱き付くレイカ。
「サイちゃんだ!!サイちゃんサイちゃん!!」
「サイですよ、魔王様!!」
「サイちゃんサイちゃんサイちゃんサイちゃんサイちゃんサイちゃんサイちゃん!!!」
「はい!サイですよ、魔王様!!」
「サイちゃんんんん!!!サイちゃんんんんん!!!」
「間違いなくサイです、魔王様!!」
「寂しかったよぉぉぉぉ!!サイちゃんんんんんんんんん!!!」
「すいません、しばらく留守にしてしまって」
「やっぱり良い匂いだぁぁぁぁぁあああ!!よしよししてぇぇぇ!!」
「はいはい、よしよし」
そのレイカの姿に呆気に取られるカエデ、リコ、コアネール。
それを見て、ハッとして少し赤くなるレイカ。
そして、サイから離れ、咳払いした。
「んんっ!!紹介するよ、こっちが僕の部下のサイちゃん」
「魔王様の部下のサイ・トリコーリです。こちらのお嬢様方は?」
「旅の途中で友達になったカエデとリコとコアネールだよ、みんな僕を助けてくれた」
「そうですか、魔王様をどうもありがとうございます」
サイは頭を下げた。
それを見て、思うカエデ。
(魔王軍第4魔将、雪女サイ、冷徹で氷のような女だと聞いていたけど……)
目の前で頭を下げるサイをじっと見る。
(結局、世の中自分で見てみないとわからないものね……)
「それと貴女がカエデ殿だな!ロイくんが言った通り美人さんだな!」
「え?私を知ってるの?」
「うむ、ロイくんから色々聞いたからな」
「ちょっと待ってサイちゃん!!色々状況がわからない、サイちゃんはロイロイと一緒にいたはずだよね?順を追って説明してよ!!」
「そ、そうですね......わかりました」
面白い!続きが気になる!今後に期待!
と思っていただけたら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちを残していただくと嬉しいです!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。




