01:逃亡する姉妹
あたしたちは何も悪くない。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。それこそ、あたしたちが生まれたこと自体が悪いことだったのかも知れない。
「出てけ、化け物」
「きゃああああ。近づかないで!」
「魔女だっ。魔女だぞ!」
「殺せ殺せ殺せ」
慣れ親しんだ村には男たちの怒号が、女たちの悲鳴が、響き渡っている。
何故と疑問を誰に問いかけることもあたしたちには許されていない。あたしはただただ泣きじゃくって、マディーの背中におぶられていた。
「メディー、大丈夫だよ」
マディーが優しく声をかけて来てくれる。
でもあたしはどこも大丈夫には思えなかった。もう全部が終わりだとそう思った。
誰か、あたしたちを助けてほしい。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
あたしは、今までずっとこの村で暮らしていた。
ただただ平穏でのどかな生活。特別面白いことはなかったものの、それでも幸せだった。
だって、マディーがいてくれたから。
マディーはあたしの双子の姉さん。
真っ青なあたしの髪色と違って、マディーは燃えるような薄紅の髪をしていたわ。
目の色も、マディーは赤であたしは紺。でも顔は瓜二つだったから「そっくりで間違えちゃうわ」だなんて母さんからよく言われた。
臆病なあたしと違ってマディーは元気いっぱい。いつもあたしを率いてくれて、他の友達とも仲が良かった。
母さんと父さんもあたしたちをとても愛してくれていた。
なのに、なのに……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
石を投げられ、罵倒の雨が降り注ぐ。
矢の先がマディーを向いて飛んで来た。それを凄まじい炎で焼き尽くし、マディーは走り続ける。
あたしはなんて情けないのか。
マディーに背負われているだけで、走ることも、手伝うことも何もできない。
「メディー、バリア張ってほしいよ!」
「わ、わかったわマディー……。『アイス・バリア』!」
あたしが必死で叫ぶと、マディーたちが氷のバリアで包まれる。
薄氷のドームのようなものだが、いつ破られるかわかったものではなかった。
「よし、逃げ切るよ!」
薄紅の髪を揺らし、マディーが大きく地を蹴った。
その途端に池に飛び込み、あたしたちは水の中へ沈んでいく。
遠くでは村人たちの喚き声が聞こえた。「待て」だの「止まれ」だの言っているが、待つわけも止まるわけもない。
あたしたちは池を泳ぎ向こう岸に着くと、再び全速力で走り出す。
別にどこへ向かうわけでもない。行く先は真っ暗な森だけだ。
背後に迫っていた追手が見えなくなる。それでもあたしは泣き続けていた。
だって、両親に裏切られ村から追放された『化け物』であるあたしとマディーにはもう帰る場所はないのだから。
面白い! 続きを読みたい! など思っていただけましたら、ブックマークや評価をしてくださると作者がとっても喜びます。
ご意見ご感想、お待ちしております!