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第6話 おっさん、玉子を売る

助手(アシスタント)、来いアルマ」


 次の日の朝、アルマを呼び出した。


「大変や。うちが二人おる事になっとる」

「どういう事?」

「帰ったら、ここ数日間の記憶がだぶってるんや。なんや気持ち悪うて」


 アシスタントのアルマと商会をやっているアルマが同時に存在するって事か。


「気にしたら負けだ。神様が決めたルールだよ」

「そやな」

「今日も頼む」

「はいな。ほな、今日も頑張りまっせ」


 今日の売り物は玉子だ。

 昨日、あれから市場調査した結果。

 玉子が高い事が分かった。


「行かれへんほど遠い秘境で採れた玉子が、一個銅貨10枚。スキルで保存してるさかい新鮮やで」


 アルマが口上を述べる。

 昨日、水を買った料理人が来た。


「本当に新鮮なんだな」

「ああ、保証する」

「1個くれ」


 1個かよ。けち臭いな。

 それから、玉子は売れない。

 選択を間違ったか。


 30分後に料理人が息を切らしてやってきて言った。


「はぁはぁ、玉子を全部くれ」

「まいどあり」

「こんな品質の良い玉子は初めてだ。この店はひいきにさせてもらう。他に用意できる食材はないのか?」


 他の食材ねぇ。

 100円までだとすると。

 香辛料、パン、バナナ、オレンジ、リンゴ、砂糖、塩、菓子これぐらいだな。

 明日は食パンにしてみよう。


「明日はパンだな」

「それは楽しみだ。普通のパンと違うのだろう」

「この世のものと思われないほど柔らかいぞ。期待してくれ」


 料理人が帰り、俺はちょっと考えた。

 あれっ、飲める水で一番安いのは水道水だ。

 俺は馬鹿だ。

 1リットル4円で買えるじゃないか。

 今までの苦労はなんだったんだ。

 だが、ペットボトルがないと、湖の水じゃないのを証明できない。

 結局ペットボトルは必要か。

 それに水道水はカルキ臭い。

 売り物にするには少し不味いな。


 臭い水だと売り物にならないかもしれない。

 だが、これからは気軽に砂漠で旅をできる。

 水の心配だけはない。


 カルキ臭いのは沸騰させればましになるが、手間だな。

 水道水を売るのは当分やめておこう。


 俺は助手スキルを検証する事にした。


「アルマ、帰っていいぞ。ご苦労様」

「さいなら」


 アルマが帰って行った。


助手(アシスタント)、来いポチ」


 ポチは現れない。

 ポチは前の異世界で眷属にしていた犬だ。


助手(アシスタント)、来いアニータ」


 アニータも現れない。

 アニータは前の異世界で知り合った女の子だ。

 もしかして。


魔力通販(メールオーダー)


 属性魔導のスキルオーブを買おうとして買えないのに気づく。

 スキルオーブというのは使うとスキルが増える物だ。

 今までは行った事のある異世界の物は買えたのにな。

 今は地球の物しか買えない。

 前の異世界からここに転移するのが少しイレギュラーだったせいだな。


 属性魔導は使い勝手が良かったのに。

 残念だが、無い物はしょうがない。


助手(アシスタント)、来い秋穂」


 秋穂が現れた。

 秋穂は俺の姪で、もちろん地球人だ。

 黒髪のロングでケープを羽織ってロングスカートを穿いている。


「無二叔父さん、お久しぶりです。ここは夢の世界ですか」

「いいや、スキルで呼び出した」


 秋穂には俺の記憶があるようだ。

 違いがどこにあるのかと言えば場所だ。

 アルマは異世界で秋穂は地球。

 俺は地球以外の繋がりが絶たれたって事だろう。

 アルマが呼び出せるのは、たぶん地球で獲得した嫁召喚スキルのせいだな。

 この仕様を解き明かしたところで得るものはない。


「検証につきあってほしい。まずは俺を軽く殴ってみてくれ」

「叔父さん。変な趣味ではないですよね」

「勘違いするなよ。戦闘力を測りたいだけだ」

「えいっ」


 パンチは軽かった。


「もう少し強く」

「全力よ。とりゃ」

「全く痛くないな」


 なるほど、助手(アシスタント)のレベルは1相当とみた方がいいのだろう。

 戦闘には役立たないみたいだ。


「ありがとう。参考になったよ」


 秋穂を帰した。

 さて、現状が少し分かった。

 今日はここまでだな。


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