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第3話 おっさん、井戸に着く

 朝になったがアルマは消えていない。

 助手(アシスタント)は魔力が必要なスキルではないようだ。

 それもなんとなく分かる。

 高エネルギーの体で、アルマの魂を移動して稼働させているんじゃないかな。

 そうに違いない。


「アルマ、おはよう」

「おはようございます」

「アルマはアンデッドじゃないよな」

「わからへんけど、ちゃうと思う。なんや操ってる感じやわ」


 そうか、やっぱりロボットなのか。

 アタンも起きて来たので俺は思っている事を尋ねた。


「ところで俺達はどこに向かっているんだ」

「オアシスだよ。決まっているじゃないか」

「オアシスってどっちだ」


 アルマから矢印が出て方向を指し示す。

 おお、ナビも兼ねているのね。


「便利な召喚獣じゃな。それとも精霊か」

「俺にも詳しい事は分からん」


「水を売ってくれないか」

「良いだろう。魔力通販(メールオーダー)


 魔石を握りスキルを使う。

 昨日の残りの魔力と合わせて142魔力が使える。

 2リットルのペットボトルが2本現れた。

 だが、確か一日に必要な水って3リットルは要ると思う。

 昨日は午後遅くだったから、1リットルで足りたが。

 今日1リットルでは俺は持たない。

 少なくても1本は売れない。


「水、1本と二日分の食料と交換だ」

「いいだろう」


 俺とアルマで堅いパンみたいな物と干し肉を齧る。

 不味い飯だが、贅沢は言えない。


 野営を畳み、動物の背に揺られる。

 この動物はモレクと言うらしい。

 まあ、分かってもあまり意味がないがな。


 俺は喉が渇いて仕方ない。

 アルマは水を飲まない。

 思った通りだ。

 飲食が必要な体ではないんだな。


 不味いぞ、水が足りない。

 そう思っていたら、井戸に着いた。

 やった、水が好きなだけ飲める。

 アタンが水を汲み出す。


「飲んでいいか」

「ああ」


 手ですくい水を飲む。


「うわっ、何だ。この塩辛い水は」

「この砂漠では、どこもこうじゃ」

「これじゃ飲めない。干からびるぞ」

「そうでもない。蒸留すればいいんじゃ」


 そう言ってアタンは何やら鏡の付いた機械を組み立て始めた。

 仕組みが分かった。

 太陽光で塩水を温め、湯気を集めるのだな。


 使っているエネルギーは太陽光だけではないようだ。

 塩水を温めるのと湯気を冷やすのに魔力も使っているらしい。

 水がじわじわと出来て来る。


 モレクはというと塩水をかぶかぶ飲んでいる。

 塩水を真水に変える器官があるみたいだな。


「どうしてもの時はモレクを潰して血と水袋の水を飲むんじゃ」


 モレクは水を体に蓄えているようだ。

 なるほどなそれなら生き延びられる。

 水が貴重な事には変わりないが。


 一日掛けて次の井戸までの水を準備するようだ。

 そうだよな、蒸留は時間が掛かる。


「そのペットボトルというのは便利そうじゃの」

「オアシスに着いたら乗車賃代わりに、いくつかやるよ」

「ありがたいの。お礼に少しご馳走をしよう」

「何か獲れるのか」

「ああ、サンドクラブの群れがおるんじゃ」


 いいねぇ、カニやエビは好きだ。

 アタンは出かけるらしい。


 俺とアルマは見つめ合った。


「なんや。なんかあるんか」

「いや、久しぶりに夫婦の営みをしたいなと」

「無理言うたらあかん。嫌や」

「アルマの最初の男性は誰だ」

「思い出されへん」

「だろ。それは俺なんだよ。それにその体はアルマの体じゃない。いいだろ」

「嫌や」

「まあ仕方ないか」


 アルマとの間に微妙空気が流れた。

 程なくしてアタンが帰って来た。


「なんじゃ、不機嫌な顔をしているな。カニでも食って元気だせ」


 アタンが50センチぐらいのカニを手に持っている。


「カニは大好物だ。もう一方の大好物は食えなかったけどな」


 カニを網に乗せて竈で焼く。


「こっちの脚はもう焼けたわ」

「ありがとう」


 アルマがかいがいしく世話を焼いてくれた。

 こういう所はアルマは優しいな。

 あんな事を言ったのに。

 よし、アルマに惚れられるように頑張ろう。


 ぷりぷりの身がなんとも言えん。

 塩味の井戸水から採った塩をかけると旨味もあって、極上だった。

 あの不味い干し肉と比べようもない。

 カニしゃぶにしたいな。

 雑炊とかしたら美味いだろうな。

 レベルが上がって、魔力が増えて通販の金額が上がったらの、楽しみに取っておこう。


 明日からまた砂漠の旅だ。

 すっかり充電できた気分だ。


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