第18話 おっさん、交易する
一週間あまりで出発の準備は整った。
段ボールとはおさらばして全員に毛布を支給してあり、他には500ミリのペットボトル4本とペットボトルホルダーも支給してある。
ちなみに留守番の農作業組は全員が女性だった。
10名残すつもりが9名になった。
まあこんな事はどうでも良い。
問題の難所の流砂地帯はアルマのナビで難なく抜けられた。
道中モンスターは何度か襲ってきたが、怪我人を出す事もなく済んだ。
イゼゼオアシスに着いたが勝手が分からん。
討伐隊のリーダーだったメルスという男が指揮を執るらしい。
「交易品のマヨネーズと香辛料と絵画を渡すから売って来てくれ。できるだけ高値でな」
「分かってるさ。仕入れるのは人とモレクだな」
「ああ、そうだ」
大丈夫かね。
戦闘馬鹿でないと良いんだが。
程なくして来た移民をみて、ちょっと俺は後悔した。
移民は子供だったからだ。
こいつらロリコンじゃないだろうな。
「移民の候補が子供に見えるんだが。俺の目がおかしいのか」
「いや、正常だ。言いたい事は分かる。ごく潰しだと言うんだろ。心配するな後から女も来る」
考えようによっては魔力の足しにはなる。
俺達のオアシスにいる人達の平均は10レベルだ。
子供達をそこまで引き上げれば、或いはというところだ。
「おじさん腹減った。食わしてくれるんだろう。そういう約束だ」
「食えないのなら帰る」
「ほらよ。サンドシャークの干物だ。高級品だぞ」
俺はアイテムボックスからサンドシャークの干物を出してやった。
「うめぇ」
「一生ついていく」
「これは悪くない」
「至福」
子供達が干物に群がる。
男達は腰につけた500ミリのペットボトルから水道水を飲ませたりしている。
面倒見の良い奴らだ。
案外と子供好きなんだな。
女達が到着した。
どの女もガリガリだ。
食えてない感じだ。
しょうがない雑炊を作ってやるか。
野菜を切って鍋に入れる。
塩や粉末調味料を入れて煮立ったら、砥いだ米を入れて待てば完成だ。
男達も真似をして作り始めた。
はふはふ言いながらみんなで食った。
大人数で食べる食事は美味いな。
なぜか食が進む。
「ふぃー、まんぷく」
「お腹いっぱい食べれるなんて夢のようです」
一様に満足している感じだ。
もうカップルらしき物もできていた。
カップルどころか子供にお父さんなんて呼ばせている奴もいる。
平和だが、こいつらをなんとかしないといけないのは大変だ。
先を思うとため息しか出て来ない。
「そうだ、忘れるところだった。グエルオアシスに家族を残してきた奴は手紙を出せ」
「いいのか」
「どうせいつかはグエルオアシスのやつらに俺達の事がばれる。遅いか早いかだ」
「すまん、恩に着る」
すぐに出発したいが、ここに滞在して俺が交易すればするほど金銭的には楽になる。
なにせ俺は工場みたいなものだからな。
売り手の近くで生産した方が良い。
子供達のレベル上げもしたい。
武器はクロスボウだな。
今の日本では許可がないと買えないが、魔力通販では関係ない。
「メルス、子供達を鍛えてくれ」
「お安い御用だ。遠くから撃つだけなら、いくらでもやりようがある。接近戦になれば俺達が守るから平気だ」
「頼んだぞ」
魔力通販で物を出した後は暇で仕方ない。
例のヴァンパイヤモスキートがペットボトルの中にうじゃうじゃと湧いてた。
大きさはガガンボぐらい、3センチ大だな。
こんなのに血を吸われたらたまらない。
火のついた蚊取り線香の切れ端をペットボトルの中に落とす。
おー、死んだな。
交易品の候補に蚊取り線香を入れておこう。
洗濯に行った女達が帰って来た。
何か噂を聞いたかと問うと、マヨネーズの噂や、グエルオアシスの例の交易路の話とか、ダンジョンの情報なんてのがあった。
大半は恋バナなんかだったけどもな。
次の俺の目標が決まった。
サンドシャークダンジョンだ。
攻略法が分かっている今、これを制覇するのは容易い。
ダンジョンコアの魔力を吸い取れば大量に物を買える。
一気に楽になるはずだ。
俺は何時ダンジョンを攻略しても良いように魔力回路を書くインクを仕入れた。