21 宇宙人Xは犯人ではなかった
「あの、ちょっとお聞きしたいんですが」
と、手を挙げて太刀に質問をした生徒が居た。
その生徒に対して太刀は、
「何だ?」
と返す。すると生徒は続けてこう尋ねた。
「この検査の本当の目的は、新型の(・)ウイルス(・・・・)を(・)調べる(・・・)為の(・)もの(・・)で(・)は(・)ない(・・)です(・・)よ(・)ね(・)?」
その言葉に、周りに居た生徒達が目を丸くする。
そんな中太刀は至って平然と、
「そうだ」
と答え、こう続けた。
「実はこのクラスに、盗撮癖と女装趣味がある困った男が居るという情報を掴んでな。
それが誰なのか、この検査で洗い出そうという訳だ」
「チィッ・・・・・・」
太刀の言葉に、その生徒は小さく舌打ちをして続けた。
「まさかこんなに早くシッポを掴まれるとはな。
あんたらの動きをちゃんと把握できていれば、それなりに対処はできたんだけどよ」
「その対処をさせない為に、我々は秘密裏に行動してきたのだ。
それはそうと、お前が私達の探していた盗撮犯という事でいいんだな?」
薄い笑みを浮かべながら言う太刀に、その生徒は険しい顔をしながら、
「ああ」
と答えた。そのやりとりに、傍らに居た笑美と華子が、
「盗撮犯?」
「一体、何の事ですか?」
と、状況が飲み込めない様子で首を傾げた。
一方一連の事情を理解している撫子は、その生徒の自白に驚きを隠せなかった。
(まさか、そんな、彼女が犯人だったなんて⁉)
そんな撫子の視線の先に居た犯人は、
クラスメイトのA子でも、
B子でも、
謎の宇宙人Xでもなかった。
その人物とは、撫子が一番犯人の可能性が低いと踏んでいた、
あの隠子だったのだ。




