20 A子が最も怪しい
そして約十分後、身体検査は滞りなく進み、
検査を終えた生徒は次々と教室に戻って行った。
この時点で検査を終えていないのは、撫子を含めた数人の生徒だけである。
それはつまり、太刀の探す盗撮犯がまだ見つかっていないという事であり、
その犯人は、今この保健室に残っている数人の生徒の中に居るという事であった。
(本当にこの中に、女装した盗撮犯が居るのかしら?)
クラスの生徒が一人、また一人と教室に戻って行くたびに、
撫子の心の中で緊張感が高まっていく。
一方保健室前の廊下で待機していた紳士クンは、
(どうかお姉ちゃんとボクが、入れ替わっている事がバレませんように)
と、別のところで緊張感を高めていた。
ちなみに今保健室に残っているのは、
撫子、
笑美、
華子、
隠子、
そしてクラスメイトのA子だけであった。
(この中で一番盗撮犯っぽいのは誰かしら?)
撫子は他の四人の顔を眺めながら、頭の中で推理してみた。
まずは笑美について。
(この子が盗撮犯っていうのは考えにくいかな。
明るくて活発そうだから、盗撮なんて陰気な事はしそうにないし。
いや、だからこそ裏ではそういう事をするって事もあるかしら?)
次に華子。
(う~ん、この四人の中ではかなり怪しいわね。
前髪がやけに長くて目元が見えないし、表情もよく分からない。
ていうかあの子は周りが見えているのかしら?
前髪が邪魔で何も見えないんじゃないの?)
続いて隠子。
(この子が犯人っていうのはまずないだろうなぁ。
見た目も中身も生粋のお嬢様って感じだし、
これが女装した男だなんて考えられないわ。まさに歩く聖人淑女ね)
最後に、クラスメイトのA子。
(怪しいわ、この子が一番怪しいわ。
今思いついたように現れ、名前も姿も描写されない。
おまけにセリフもない。
まさに、犯人になる為に現れたような人物。
恐らくこの子が盗撮犯ね。この怪しさからして間違いないわ!)
撫子はここで、名前も見た目も不明の、クラスメイトA子が犯人だと推理したようだ。
著者としては、クラスメイトB子や、謎の宇宙人Xもかなり怪しいと睨んでいるのだが、
果たして真相やいかに⁉
と、その時だった。




