16 聞いてないクラスメイト
一方撫子はその頃、校舎の玄関に辿りつき、紳士クンの靴箱を探していた。
「えーと、蓋垣乙子の靴箱は・・・・・・あ、あった」
暫く探した末にようやくそれを見つけた撫子は、手早く靴を履き替えた。
どうやら紳士クンと撫子は足のサイズも同じのようで、
撫子の足に紳士クンの上履きがぴったりフィットした。
(これは、紳士の足が小さいって事?それとも私の足が大きいって事?)
そんな事を思いながら、撫子は紳士クンの教室に向かおうとした。
と、その時、
「ごきげんよう、蓋垣さん」
と、上品でややハスキーがかった声が、撫子の背後から聞こえた。
「あ、はいっ」
撫子が返事をして振り向くとそこに、黒くてツヤのある髪をお下げ髪にし、
くっきりした眉が印象的な女子生徒が、ニコやかな笑みを浮かべながら立っていた。
その女子生徒に撫子は、
「あ、ご、ごきげんよう。え、えーと・・・・・・」
と、声を詰まらせた。
彼女は恐らく紳士クンのクラスメイトなのだろうが、その彼女の名前が分からないのだ。
(何よ紳士ったら、お下げ髪の友達が居るなんて聞いてないわよ⁉)
撫子が事前の打ち合わせで聞いていた、紳士クンが普段仲良くしている友達は、
樫増笑美と戸入野華子という名の生徒だった。
しかし今目の前に居る女子生徒は、その二人の外見とは全く違っていたので、
撫子はパニックになっていた。
そんな撫子に、彼女は笑みを絶やさずに言った。
「都乃方 隠子ですよ、蓋垣さん」
「あ、ああ、都乃方さんだったよね?
あ、あははー、ボク、ちょっと度忘れしちゃってたよ。ご、ごめんね?」
撫子は笑って誤魔化しながらそう言った。
それに対し隠子と名乗った彼女は、特に気を悪くした様子もなく続けた。
「まあ、普段はあまりお話ししませんものね。
でも、蓋垣さんとは以前からお近づきになりたいと思っていましたの。
よろしければ、これからは私とも仲良くしてくださいね」
そう言って隠子が右手を差し出したので、撫子も、
「あ、こ、こちらこそよろしく、都乃方さん」
と言いながら右手を差し出し、互いに握手を交わした。
そして彼女の上品な笑顔を眺めながら、撫子はこう思った。
(この子は見た目だけじゃなくて中身も生粋のお嬢様って感じね。
見た目だけがお嬢様な何処かの二人とは大違いだわ)
その頃生徒会室で、令と太刀が同時にクシャミをしたのは余談である。
それはともかく撫子と隠子は、四階にある教室に一緒に向かった。




