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紳士クンの、割と不本意な日々  作者: 椎家 友妻
第五話 紳士クンの危機
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14 紳士クン、なり切る

そんな二人に、令が声を潜めて言った。

 「二人とも、そんなぎこちない動きじゃあすぐに周りにバレちゃうわよ?

特にタッちゃんに」

 「そ、そうは仰いますけど、結構難しいですよ、これ」

 令の言葉に撫子はそう返し、紳士クンもそれに相槌(あいづち)をうつ。

しかし令はニコッと笑いながら言った。

 「大丈夫。二人は見た目も声もそっくりなんだから、堂々としていればバレないわよ」

 しかし紳士クンと撫子は、

 (そうかなぁ・・・・・・)

 と、心の中で不安に思いながら、大きな溜息をついた。

するとその時、前の方から、

 「コラ、遅いぞ」

 という声が聞こえ、不機嫌そうな顔をした太刀がやって来た。

そしてそれを見た紳士(・・)クン(・・・)の(・)撫子(・・)が思わず何かを口走りそうになったが、

それより一瞬早く、令が太刀に言った。

 「おはようタッちゃん、今日もいい天気ね」

 それに対して太刀は、怒りのこもった口調で答える。

 「天気なんかどうでもいい。

それより今日は例の件の打ち合わせをするから、

早めに登校しろと言っておいただろう」

 「ゴメンなさい。乙子ちゃんの事を待っていたら、遅くなっちゃって」

 そう言って令は、身をすくませた撫子の方を見た。

その視線を追って、太刀も撫子を見やる。

その撫子は反射的に目を逸らし、顔を俯けた。

そんな撫子の行動を不審に思ったのか、太刀は目を細めた。

そして撫子に対し、

 「おい、お前は──────」

 と、何かを言いかけた時、傍に居た撫子役(・・・)の(・)紳士(・・)クン(・・)が、

それをさえぎるように撫子に言った。

 「乙子、私達は今から生徒会の用事があるから、先に行ってていいわよ」

 紳士クンのその言葉には、さっきのようなぎこちなさは無く、

いつも撫子が紳士クンに言う時と、全く同じ様な口振りだった。

それに対して撫子は一瞬声を詰まらせたが、すぐに

 「う、うん、分かったよお姉ちゃん」

 と言って、

 「それでは令お姉さま、太刀お姉さま、ボクはここで失礼します」

 と令と紳士クンに一礼をし、小走りに校舎の方に駆けて行った。

 「また後でね~、乙子ちゃ~ん」

 走り去る撫子の後姿に、令は手を振りながら言った。

一方太刀は、そんな撫子の後姿を見送った後、紳士クンの方に顔を向け、

その顔を真っ直ぐに見据えた。

それに対して紳士クンは、ニコッと笑いながら言った。

 「私の顔に、何かついてますか?」

 「・・・・・・」

 太刀は数秒間、黙ったまま紳士クンの顔を見詰めた。

そしてその後、こう尋ねた。

 「お(・・)は(・)、撫子(・・)か(・)?」



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