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11 撫子には伝わった
すると次の瞬間、隣で黙って令の話を聞いていた撫子が、
「うゎああん!」
と声を上げて、やにわに泣き出した。
「えぇっ⁉ど、どうしたのお姉ちゃん⁉」
驚きの声を上げる紳士クンに、撫子は鼻をすすりながら言った。
「うぅっ、ぐすっ、今の令お姉さまの話を聞いてて、
もし、紳士も何処か遠い外国へ留学したらって思うと、
何だか悲しくなっちゃって・・・・・・」
「ナッちゃん!あなたなら私の悲しみ、分かってくれると信じていたわ!」
令はそう言って、撫子をガバッと抱き締めた。
「令お姉さま!」
「ナッちゃん!」
「あのぅ・・・・・・」
熱い抱擁を交わす令と撫子を眺めながら、紳士クンは心の中でこう思った。
(何なのこれ?)
紳士クンはどうすればいいのか分からなくなっていた。
著者自身、この先どうすればいいのか分からなくなっているほどである。
そんな中撫子は令から身を離し、紳士クンに向かって言った。
「じゃあこの話は終わりにして、本題に戻るわね」
「え⁉そうなの⁉」
まだ腑に落ちない事だらけの紳士クンだったが、撫子は構わず続けた。




