10 伝わらなかった愛情
「ところが不思議な事に、小学校に入学した辺りから、
あの子は女の子の服を着るのを嫌がるようになったの」
「何で不思議と思うんですか⁉男なら大体それが普通の反応です!」
「でも私はあの子の為に、無理矢理女の子の服を着せ続けたわ」
「弟さんの為じゃないですよね?令お姉さまの為ですよね?」
「そして私はあの子を、エシオニア学園の女子部に入学させる決心をした」
「弟さんの決心はなかったんですか?」
「・・・・・・それが、あの子は中学三年になったある日、
イギリスの男子校に留学すると言い出したの。
私、どうしてそんな事を言うのか、皆目見当がつかなかった」
「考えるまでもなく分かると思いますけど・・・・・・」
「そしてあの子は中学を卒業すると同時に、イギリスへと旅立ってしまった。
あれ程あの子の事を愛していた私を、日本に残して・・・・・・」
「別れのシーンですけど、全然悲しいと思えないです」
「それからの私は、毎日悲しみに暮れたわ」
「あんまり同情する気になれないんですけど」
「そんなある日、私はあなたと出会ったの」
「何か嫌なタイミングですね・・・・・・」
「初めてあなたを見た時、私は直感で悟ったわ。
『神様は、私に令奈ちゃんの代わりの子を授けてくださったのだわ』と」
「神様は絶対そんなつもりじゃなかったと思います」
「そこで私は新たな決心をしたの。
『令奈ちゃんは遠くの国へ行ってしまったけど、
その代わりに紳士ちゃんを、エシオニア学園の女子部に入学させて、
立派なレディーに育てよう』って。
だから私は紳士ちゃんを、エシオニア学園の女子部に入学させたの。
これが本当の理由よ。分かって、もらえた?」
令のその真剣な言葉に、紳士クンもまた、真剣に答えた。
「分かりましたけど、全く納得できません」




