17 彼女の条件
紳士クンの申し出に、静香は右手の人差し指をアゴにあて、少し考えた後にこう言った。
「ならひとつ、条件があります」
「え?条件?」
「はい、この条件を飲んでもらえないならば、
私は乙子さんの正体を、学園中にバラそうと思います」
「えええぇっ⁉そ、それは困ります!どうかそれだけは!」
「では、私の条件を聞いてもらえますか?」
「聞きます聞きます!ボクに出来る事なら何でも聞きます!」
紳士クンはなりふり構わずそう言った。
まるで自分の首元にナイフを突きつけられた気分だった。
(い、一体どんな条件を出されるんだろう?)
紳士クンの額からとめどなく汗が流れる。
そんな紳士クンを、静香は妖しげな笑みを浮かべながら眺めた。
そして暫くの間そうした後、一転しておずおずした調子になり、こう切り出した。
「それじゃあ私の、その・・・・・・お友達に、なってもらえませんか?」
「へ?」
静香の思わぬ言葉に、紳士クンは目を丸くした。
そして静香に尋ねた。
「え?友達、ですか?それだけ?」
もっと脅迫的な要求をされると思っていた紳士クンは、
拍子抜けした様子で目を白黒させる。
すると静香は俯き加減になって言った。
「やっぱり、私みたいな変な女とお友達になるのは、嫌、ですよね?」
「そ、そんな事ないですよ!」
紳士クンは反射的に叫んでこう続けた。
「静香さんは全然変な人じゃないですよ!
ボクなんかでよければ、いくらでも友達になります!
さっきの条件がなくたって!」
「本当、ですか?」
「本当です!男に二言はありません!」
紳士クンはここぞとばかりにそう言った。
それを見た静香はクスッと笑い、嬉しそうに言った。
「ありがとうございます。そう言ってもらえるなら、
乙子さんの秘密は私の心の中にしまっておきます。
これから仲良くしてくださいね?乙子さん」
「は、はい!よろしくお願いします!」
こうして紳士クンに、また一人新しい友達ができたのだった。
めでたしめでたし。




