14 アラ大変
・・・・・・。
「・・・・・・。どうやら、行ったみたいですね」
笑美と華子が走り去った後、
図書室の隣の教室からひょこっと顔を出した人物がそう言った。
「あ、あのぅ・・・・・・」
その人物に、隣に居た紳士クン(・・)が(・)声をかけた。
「これは一体どういう事ですか?静香さん(・・)」
そう、紳士クンを図書室から引っ張り出し、隣のこの部屋に連れて来たのは、
二年の迚摸静香だった。
そして静香は紳士クンの問いかけに、振り返ってこう答えた。
「実は私、この校舎に閉じ込められていたんです」
「え⁉そ、そうだったんですか⁉」
驚く紳士クンに、静香は静かな口調で続けた。
「乙子さんは、私が図書委員をしているのはご存じですよね?」
「は、はい」
「私、子供の頃から読書が大好きなんです。
それで、この図書室には今の図書館に置いていない珍しい本が沢山あるので、
毎日放課後ここへ来て読書をしていたんです。
そして今日も放課後にここへ来て読書をして、
下校時刻になったので帰ろうとしたら、アラ大変。
ここに入る時に通った窓が、外から板で塞がれているじゃあありませんか」
「ああ、それは生徒会の副会長さんが、この校舎に生徒を入らせない為にやったみたいです」
「そうだったんですか。それならもう、ここに来るのは控えないといけませんね」
「そうですね。それで、あの、という事は、
静香さんは放課後から今まで、ずっとこの校舎に居たんですよね?」
「はい。唯一の出入り口が塞がれてしまったので」
「あの、それなんですけど、他の窓や扉の鍵を、
普通に(・)内側から(・・)開ければ(・・・・)、すんなりここから出られたのではないですか?」
「・・・・・・そうですね・・・・・・」
「気が、つかなかったんですか?」
「ゴメンナサイ。私、読書以外の事ではてんで(・・・)頭が回らなくて・・・・・・」
「あ、いや、それは別にいいんです。
それより、静香さんは毎日放課後、この図書室に来ていたんですね?」
「そうです」
「じゃ、じゃあ、昨日ボクの友達が図書室で見た幽霊って、
静香さんの事だったんですか?」
「ああ、そうですね。でも、私は幽霊じゃありません」
「はい、もちろん分かっています。
でも、昨日は図書室に鍵をかけて中に隠れたらしいですね?どうしてそんな事を?」
「見回りの先生が来たと思ったんです。
だから咄嗟に鍵をかけて、中に隠れたんです。
でもあれは、乙子さんのお友達だったんですね」
「はい、何としても幽霊に会いたいらしくて。というか、
さっき本人に直接説明してくれたらよかったじゃないですか。
それなのにボクをあの二人からこっそり引き離すような事をして。
あれじゃあ却って幽霊の仕業だと勘違いされますよ?」
「仕方が、なかったんです」




