表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紳士クンの、割と不本意な日々  作者: 椎家 友妻
第四話 紳士クンの部活動
71/103

13 華子が食べたか、神隠しにあったか

「あれ?トイレかな?」

 「この三人の中で一番怖がりな乙子さんが、一人で他の場所に行ったとは思えません。

万が一そうだとしても、私達に何も言わずに居なくなるのは不自然です。

となると、考えられるのは・・・・・・」

 「あんたが、乙子ちゃんを食べた・・・・・・」

 「人を化け物みたいに言わないでください。そうじゃなくて、これは幽霊の仕業ですよ」

 「ゆ、幽霊の?そんなアホな」

 「いーえ、幽霊が乙子さんを、霊界へ連れ去ってしまったんです。

いわゆる神隠しというやつですね」

 「そ、そんなん非現実的すぎるやろ!

怖くなったから一人で先に帰ったんかもしれんやんか!」

 「乙子さんが私達を置いて帰ったりすると思いますか?」

 「それは、思えへんけど・・・・・・でも、他に理由がないやろ!」

 「だから、幽霊の仕業なんですって」

 華子はそう言って、自分の顔を懐中電灯で照らし、笑美にズズイッと詰め寄った。

 「あ、あんたの方がよっぽど幽霊みたいやないか」

 笑美がそう言った時、外に突風が吹き、校舎の窓がガタン!と大きな音を立てた。

 「ひいっ⁉」

 「──────ッ!」

 その音に思わず身を屈める笑美と華子。

そして二人で顔を見合わせ、笑美が顔をひきつらせながら言った。

 「もし、万が一、乙子ちゃんが幽霊に連れ去られたとしたら、

このままやと私らも連れ去られるんかな?」

 「それは、充分にありえる事ですね・・・・・・」

 そう答える華子の声も、わずかに震えていた。

 「ひょっとして私ら、これ以上ここに居るのはマズイんとちゃう?」

 「ええ、速やかに退散した方がよさそうですね」

 「でもやっぱり、乙子ちゃんはこの校舎の何処かに()るかもしれんし・・・・・・」

 「かといって、今からこの校舎の中を探して回る勇気がありますか?」

 「・・・・・・正直言うて、ない」

 「私も、この状況が少し怖くなってきました・・・・・・」

 「とりあえず、逃げへん?」

 「乙子さんは、どうします?」

 「えーと・・・・・・明日!明日の朝!またここに探しに来よう!」

 「私もそれに賛成です」

 「じ、じゃあ、二人の意見もまとまった事やし・・・・・・」

 「そう、ですね・・・・・・」

 そう言って頷き合った笑美と華子は、ひとつ間を置いた後、

 「「逃げろーっ!」」

 と二人同時に叫び、必死のパッチで図書室から逃げ出した。

 「乙子ちゃんゴメーン!」

 「明日必ず探しに来ますからねっ!」

 笑美と華子はそう叫びながら、一階への階段を駆け下りていった。

その直後に外の風もやみ、あたりは時が止まった様に静かになった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ