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紳士クンの、割と不本意な日々  作者: 椎家 友妻
第四話 紳士クンの部活動
68/103

10 あっさり入る二人

そして二階へ続く階段を上がり、目的の図書室前へと辿りついた。

 「昨日私がここに来た時、このすりガラスの向こうに、幽霊が居たのです」

 華子はそう言って、右手の人差し指で図書室の窓をトントンと叩いた。

 「今のところ、中には何も()らんみたいやけど?」

 笑美はすりガラス越しに図書室を覗きながら言った。それに対して華子。

 「常に姿を見せているとは限りませんからね。昨日だって、途中で姿が消えましたし」

 「嘘くさいな~」

 「本当ですよ!」

 と、笑美と華子が言い合っているかたわらで、紳士クンは図書室に背を向け、

頭を抱えて縮み上がっていた。

この行動は勿論恐怖からくるものだが、心の中では葛藤もしていた。

 (も、もし華子さんの言うとおり、ここに幽霊が出たらどうしよう。

そしてその幽霊がボク達に襲い掛かってきたら・・・・・・

い、いや!こんな弱気じゃダメだ!

内緒にしているとはいえ、ボクはこの中で唯一の男なんだ!

こういう時こそ体を張って、笑美さんと華子さんを守らないと!

・・・・・・でも、やっぱり幽霊には会いたくないなぁ・・・・・・)

 幽霊に対する恐怖と、こんな時こそ男らしく振舞わなければならないというプライドが、

紳士クンの中で激しくぶつかっている。

この学園に入学してからこっち、ずっと女の子として振舞ってきた紳士クンだが、

男らしい男になりたいという気持ちは、まだ失っていなかったのだ。

そして紳士クンは遂にこう決心した。

 (よし!ここはボクが笑美さんと華子さんを守るんだ!

だからまずはボクが最初に図書室に入ろう!)

 紳士クンは勇ましく笑美達の方に振り向いた。

すると、

 「お?鍵は開いてるみたいやで?」

 「おかしいですね、昨日は確かに閉まっていたのに・・・・・・」

 と言いながら、笑美と華子はさっさと図書室に入って行った。

それを見た紳士クンは、

 「ま、待ってよ二人とも!」

 と言いながら慌てて後を追った。

どうやら紳士クンが男らしさを発揮するのは、まだまだ先のようだった。



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