7 幽霊より怖い存在
「ど、どないしたんや⁉」
「華子さん⁉」
その声を聞いた笑美と紳士クンは、慌てて華子のそばに駆け寄った。
そして華子が唖然とした表情で見詰める先に目をやると、
そこから侵入するはずだった窓を塞ぐように、木の板が打ち付けられていた。
「これはどういう事ですか⁉」
木の板をガシッと掴んで声を荒げる華子。
「昨日はこんな物なかったのに!一体誰がこんな事を⁉
そうか!これは幽霊の仕業ですね!
幽霊が私達に姿を見られたくないから、こんな妨害工作をしたに違いありません!」
「お、落ち着いて華子さん」
「幽霊がそんな大工さんみたいなマネ、出来る訳ないやんか」
エキサイトする華子に紳士クンと笑美はそう言ったが、華子の怒りは治まらない。
「じゃあ一体誰がこんな事をしたと言うんですか⁉
私達オカルト研究会の活動を邪魔するような事を!」
華子が紳士クンと笑美にそう言った時、華子の背後から、
「私がしたんだ」
という声がした。
その瞬間、紳士クンと笑美の表情が凍りつき、
それを見た華子は、恐る恐る後ろに振り返った。
するとそこに、木の板を肩に担ぎ、工具箱を持った太刀が、
刀のように鋭い目つきで華子達を見下ろしていた。
それを見た華子も表情を凍りつかせ、
「ひぁっ⁉」
と声を上げ、ニ、三歩後ろに退いた。
幽霊を全く恐れない華子も、流石に太刀には恐怖心を抱くようだ。
そしてそれを傍らで見ていた紳士クンは、心の中で密かにこう思った。
(幽霊なんかより、この人の方がよっぽど怖いかも・・・・・・)
その幽霊よりも恐ろしいであろう太刀は、トゲを刺すような口調で言った。
「お前達、こんな所で何をしていた?」
「あ、う、え~・・・・・・」
「ふ、副会長さんこそ、こんな所で何をしてハッたんですか?」
咄嗟に言葉が出ない華子に代わり、笑美が太刀にそう尋ねる。
「見ての通り、鍵の壊れたこの窓を板で塞いだんだ。
最近この旧校舎に幽霊が出るという噂を信じて、
しきりに出入りしている生徒が居ると聞いたのでな。
そしてその当人達が今、私の目の前に居るという訳だ」
そう言って太刀は、華子達をギロリと睨んだ。
それに対して華子は、
「噂なんかじゃないです!本当にここには幽──────モガッ」
と言おうとしたが、笑美が慌ててその口を塞ぎ、愛想笑いを浮かべながら太刀に言った。
「あ、あははー、そうですよねー?こんな所に幽霊なんて居る訳ないですよねー?
そもそもここは、立ち入り禁止ですもんねー?」
「ほう、よく分かっているじゃないか。
ならばその規則を破ればどんな罰が与えられるか、言わなくとも分かるな?」
太刀はそう言うと板と工具箱を地面に置き、後ろ襟から背中に手を入れ、
木刀を取り出した。
それを見た紳士クンと笑美は、冗談抜きで命の危険を察知した。
「わ!わ!どうかそれだけはごカンベンを!」
「ボ、ボク達すぐに帰りますから!」
考えるよりも先にそう口走った笑美と紳士クンは、
「何を言ってるんですか!ここで引き下がる訳にはいきません!」
と叫ぶ華子を二人で担ぎ上げ、一目散に太刀の元から逃げて行った。
「やれやれ」
太刀はそう呟き、木刀を背中にしまった。
そしてかたわらにそびえ立つ旧校舎を見上げ、
「幽霊なんてものが、この世に存在する訳ないだろう」
と、自分に言い聞かせるように言った。
すると次の瞬間やにわに突風が吹き、旧校舎の窓ガラスが、ガタガタと音を立てて揺れた。
「ひっ⁉」
と声を上げたのは太刀。そしてハッと我に返り、
「別に、幽霊が怖い訳じゃないからな!」
と、誰に対してかは知らないがそう言い訳をし、
板と工具箱も持たず、新校舎の方へ全力で走って行った。




