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紳士クンの、割と不本意な日々  作者: 椎家 友妻
第四話 紳士クンの部活動
62/103

4 何か、居る

音がした。

決して大きくはないが、確かに音がした。

何かが落ちたか、ぶつかったような音だった。

その瞬間、華子は身構えた。

そして直感的にこう思った。

 (何か、居る)

 華子は今の音に、何か霊的なものを感じ取った。

感じ取ったというより、そうであって欲しいと願ったのだが。

とにかく彼女は、自分の耳のカンを頼りに、その音がした場所に行ってみる事にした。

 (音の出所は、そう遠くはないはず)

 華子は霊感は全くと言っていいほどないが、視覚や聴覚に関してはすこぶる鋭かった。

そしてその聴覚を頼って辿りついたのが、図書室だった。

 (私の耳が確かなら、さっきの音はここから聞こえたはずです)

 そう思ったその時、図書室のすりガラス越しに、中に人影があるのが見えた!

すりガラス越しなので顔や姿はハッキリしないが、その人影はどうやら、

華子と同じ制服を着ているようだった。

 (もしやあれが、この校舎で自殺をした女子生徒の幽霊!)

 そう確信した華子は、その姿を直に確かめるべく、

図書室の入口へ行き、その引き戸に手をかけた。

しかし引き戸は中から鍵がかけられているらしく、いくら引いても開かない。

 「どうして⁉昼間来る時にはいつも開いているのに!」

 思わずそう叫ぶ華子。

仕方がないのでもう一方の入口に行き、その引き戸を開けようとしたが、

こちらもやはり開かなかった。

その間に中の白い人影は、華子から逃げる様に図書室の奥の方へと消えていった。

 (ああっ!このままではせっかく見つけた幽霊に逃げられてしまう!

こうなったら、何とかこの窓ガラスを割って───────)

 と、強行手段に打って出ようとした、その時だった。

カラーン、カラーン、と、教会の鐘が鳴り、新校舎の方から、

 『午後六時になりました。学園内に残っている生徒は、速やかに下校しましょう』

 という放送が聞こえ、華子はハッと我に返った。

そして引き戸から手を離し、

 「次に来る時は必ず、この目で正体を突き止めます!」

 と独りごちて、駆け足で旧校舎から去った。

 華子の足音がなくなった後、旧校舎に、

閉まっていたはずの図書室の引き戸がガラッと開く音が響いた。

しかし既に旧校舎を出て校門に向かっていた華子は、その音に気づかなかった。



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