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紳士クンの、割と不本意な日々  作者: 椎家 友妻
第四話 紳士クンの部活動
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2 放課後の旧校舎

そんな訳で華子は、今日も旧校舎の前に立った。

 「さあ、今日こそは姿を見せてくださいよ?」

 華子はそう呟き、この校舎の裏手に回った。

ここは本来立ち入り禁止となっていて、正面玄関は鍵がかかっていて入れない。

しかし裏手に回ると、鍵が壊れた窓が一箇所だけあり、

そこから華子はこの校舎に侵入するのだ。

華子はその窓の前にやって来た。

そしてその窓の取っ手に手をかけると、窓はあっさりと開いた。

華子はその窓の下の(ふち)に足をかけ、

 「よいしょっ」

 と一気に乗り越えた。

そして中に入った後は、きっちりと窓を閉めておく。

万が一この窓が開いている所を誰かに見つかると、

後日に塞がれてしまう可能性がある。

これからもオカルト研究会の活動を続けていく為に、

そういう事にも細心の注意を払っているのだ。

 「さて、と」

 そういう訳でこの校舎への侵入に成功した華子は、

手始めにこの部屋に何か異変はないかとチェックした。

ここは理科の実験室で、

部屋の中に人体や骸骨の模型といった若干気味の悪い物があるが、

華子が求めているのはそんなものではない。

 (どうやらここには、幽霊は居ないようですね)

 部屋を一通り見渡してそう思った華子は、理科室から廊下へと出た。

昼休みに来る時とは違い、電燈もつかない放課後の旧校舎はかなり暗く、

幽霊など出なくとも、えもいえぬ不気味さをかもし出している。

 (これはもしかすると、もしかするかも)

 そんな暗い廊下を歩きながら、華子は怖がるどころかむしろ心を躍らせていた。

彼女には何かを怖がるという感情が欠落しているのかもしれない。

そう思わせる程に、華子はいつも通りの足取りで、スタスタと廊下を行くのだった。

しかし流石にこの暗さでは視界が悪いので、

持参した懐中電灯を鞄から取り出し、カチッとスイッチを入れ、前方を照らした。

するとその明かりの先に、校舎一階のトイレが見えた。

 (そういえば乙子さんと初めてお会いしたのは、あのトイレでしたね)

 そう、華子と紳士クンは入学して間もない頃、この旧校舎のトイレで出会ったのだ。

その時華子はトイレで用を足したが、

ティッシュを持っていなかった事に後から気づき、途方に暮れていた。

するとその時隣の個室に紳士クンが駆け込んで来たのだが、

華子はこの時紳士クンの事を幽霊だと思い、大層喜んだ。

しかしそれが生身の人間だと分かり、ひどくがっかりした事を今でも覚えている。

まあそのおかげで紳士クンと友達になれたので、そっちは喜んでいるようだが。

 (まさか、今日は来てないですよね)

 そう思った華子だが、念の為そのトイレの中も見て回った。

しかし中に紳士クンの姿はなく、幽霊の姿も見当たらなかった。



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