2 兄貴肌の姉貴
国立エシオニア学園は、紳士クンの住む家からかなり離れた場所にあった。
まず最寄のバス停からバスで二十分ほど行ったところで電車に乗り換え、
そこから更に約四十分。
そして『エシオニア学園前』という駅でおりて十分ほど歩くと、
ようやくエシオニア学園にたどり着けるのだ。
という訳で蓋垣姉弟は、約一時間をかけてエシオニア学園前の駅にたどり着いた。
家を出る時に降り始めた雨は、更に勢いを増して激しくなっていた。
「入学初日から凄い雨だねぇ」
駅の出入り口の所で空を見上げながら、紳士クンは不安そうに呟いた。
「せっかくの紳士の入学式なのに、これは何か不吉な事が起こる前触れかしらん?」
と、撫子がからかうように言う。
「え、縁起でもない事言わないでよぅ・・・・・・」
ただでさえ新たな学園生活に不安を抱いている紳士クンは、撫子の言葉に更に不安になった。
「何を落ち込んでんのよ?男ならシャンとしなさいシャンと!」
紳士クンの肩をバシバシ叩きながら、撫子は笑って言った。
「う、うん、そうだよね」
姉の手荒い励ましに、紳士クンは幾分気を持ち直した。
その光景を見ていた駅員さんは、撫子を眺めながらこう思った。
(頼りになる兄貴、いや、姉貴だ)