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紳士クンの、割と不本意な日々  作者: 椎家 友妻
第三話 紳士クンの再会
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17 乙子ちゃんは紳士クンの双子の妹という設定で

という訳で、紳士クンと撫子は一緒に校舎を出た。

そして校門へと続く庭園を歩いていると、例の告白の池の所に、居た。

 伴兆太郎が。

 兆太郎は池を囲む石のベンチに腰を下ろし、

そわそわした様子でそこに(たたず)んでいる。

そしてその光景が目に入った紳士クンは、反射的に近くにあった木の陰に隠れた。

 「ちょっと乙子ちゃん、隠れてどうすんのよ?」

 撫子が呆れた様に言う。

それに対して紳士クンは、身を縮ませながら言った。

 「だ、だって、いざ目の前にすると、怖いって言うか・・・・・・・」

 「大丈夫よ。あなたは乙子ちゃんという女の子で、

紳士クンとは双子の兄妹。堂々として振舞えば、あいつにバレる事もないわよ」

 「そ、そうかなぁ・・・・・・」

 「そうなの!」

 不安そうに首を傾げる紳士クンの首根っこを掴んだ撫子は、

そのままグイッと引っ張り出して言った。

 「ほら!とっとと行ってちゃっちゃと話をつけてきなさい!

私がちゃんとここで見ていてあげるから!」

 そう言って撫子は、ドン!と紳士クンの背中を突き飛ばした。

 「わわっ⁉」

 その勢いで紳士クンは、ニ、三歩前によろめく。

その視線の先には兆太郎の後姿。

思わず立ち止まって振り向くと、木陰から顔だけ出した撫子が、

『早く行きなさい!』と口パクしながら、シッシとやるように右手を振っていた。

 (こ、こうなったら、行くしかないよね・・・・・・)

 紳士クンは覚悟を決め、兆太郎の居る告白の池に向かって歩き出した。

 (ボクが女だって押し通せば、ボクは助かるんだ)

 歩きながらそう自分に言い聞かせる紳士クン。

しかし元々男らしい男になりたいと思っている紳士クンは、

胸の奥がチクチクと痛んだ。

そんな中紳士クンは兆太郎の近くに辿りついた。

そして俯き加減になっていた彼に、恐る恐る声をかけた。

 「あ、あのぅ・・・・・・」

 その声に、兆太郎は顔を上げて振り向いた。

そして紳士クンの姿を見た瞬間、

 「け、蓋垣!」

 と声を上げて立ち上がり、紳士クンの両肩をガシッと掴んだ。

 「蓋垣!お前はやっぱり蓋垣だったんだな!会いたかったぞ!」

 そう言って紳士クンの体をガックンガックン揺さぶる兆太郎。

一方紳士クンは、ガックンガックン揺らされながらも必死に訴えた。

 「お、落ち着いてください!

ボク、いえ、()は、あなたの知っている紳士ではありません!」

 「何?」

 紳士クンの言葉に、兆太郎の動きがピタッと止まった。

そして紳士クンにグイッと顔を近づけ、こう続けた。

 「どういう事だ⁉どこからどう見ても、お前はあの(けだ)(かき)紳士(しんし)じゃねぇか!」

 「ち、違うんです!蓋垣紳士は、私の双子の兄です!」

 「双子の、兄?」



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