15 既にバレている?
紳士クンは思わず、
「うわわっ⁉」
と驚きの声を上げ、ニ、三歩後ろによろめいた。
対する静香は大して驚く素振りもなく、昼間と同じ様に抑揚のない口調で言った。
「あら、あなたは昼休みの時の」
「あ、ど、どうも」
紳士クンは苦笑いしながら静香に会釈する。
すると静香は表情のない顔で、紳士クンの頭から足の先までをじーっと眺めた。
「あの、何ですか?」
紳士クンが不安になって尋ねると、静香は呟く様にこう言った。
「女子の制服でも、全然違和感ないですよね」
「えっ⁉」
その言葉を聞き、顔をひきつらせる紳士クン。
(そ、それって、ボクが男の割には女子の制服も似合うって事ーっ⁉)
静香は昼休みの時も、紳士クンを男だと見抜いたような発言をしていた。
果たして彼女は、紳士クンの正体を見抜いているのだろうか?
静香は表情があまりないだけに、その辺りの所が紳士クンには全く分からず、
それが却って紳士クンの不安を煽り立てるのだった。
(こ、この人は、ボクが男だって事が分かってるの⁉それとも分かってないの⁉)
しかしそんな紳士クンの不安など露も知らない様子で、静香は紳士クンに言った。
「お姉さんに、会いに来たんですよね?」
「へっ?あ、は、はひっ!そうです!」
静香の言葉に、紳士クンは思わず声を裏返らせながら答えた。するとそこに、
「あれ?し・・・・・・じゃなくて、乙子じゃないの。どうしたのこんな所で?」
と、撫子が教室から出て来て紳士クンに声をかけた。それを見た静香は、
「それじゃあ、私はこれで」
と言い、紳士クンと撫子に会釈をし、ゆっくりとした足取りで去って行った。
「あ、さ、さようなら」
静香の背中にそう言う紳士クンに、撫子は不思議そうな顔をして言った。
「あんた、今彼女とどんな話をしてたの?」
「え?えーと、何と言ったらいいか、ボクも難しいんだけど・・・・・・」
まさかこの場で、自分が男だとバレたかもしれないとは言えず、紳士クンは返答に困った。
すると撫子は構わずこう続けた。
「私、あの人がこの学園で誰かと会話してるの、初めて見たわ」
「え?そ、そうなの?確かに大人しそうな人だけど、
ボクには普通に話しかけてくれたよ?」
「ウチのクラスじゃとても静かにしてるわよ。
あの人の声自体を聞いたのも、随分久しぶりな気がするわ」
「へ、へぇ~、そうなんだ・・・・・・」
それを聞いた紳士クンは、静香という人物がますます分からなくなった。




