12 伴兆太郎の疑問
一方その頃、男子部校舎のとある教室で、窓の外を見ながら
「ふぅっ・・・・・」と溜息をつく生徒が居た。
伴兆太郎である。
兆太郎は紳士クンのハートを射止める為、男らしさを磨くべくこの学園に入学した。
そして紳士クンは何処か他の高校に入学したのだと思っていた。
しかしつい先程、その紳士クンとあの図書館で再会した。
何度も言うが、兆太郎はホモである。
彼が中学時代に一目惚れした相手は、紳士クンという男の子であった。
しかしさっき兆太郎が見た紳士クンは、女子部の制服を着ていた。
(あれは、蓋垣だったよな?)
ある程度の確信を持ちつつも、兆太郎はまだあの人物が紳士クンである事に、
半身半疑であった。
そしてこうも考えた。
(もしかしてあれは、ひとつ年上の姉の方だったのか?)
しかし兆太郎はすぐにその考えを頭から消した。
何故なら兆太郎の知る限りでは、姉の撫子はもっと凶暴で、
目つきも紳士クンとは正反対に、イカツくて鋭い。
彼自身も、彼女にはひどい目にあわされたのだ。
なので、あの人物が撫子であるとは到底考えられなかった。
そして、図書館であの人物が兆太郎の名を呼んだ事も考えると、
他人の空似とは思えないのである。
(という事はやっぱり、あいつは俺が惚れた蓋垣だったんだ!)
兆太郎はここでハッキリと確信した。
しかしそうなると、ひとつの疑問が浮かび上がる。
(あいつ、どうして女子の制服を着ていたんだ?)




