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10 図書館ではお静かに
「そ、そういうお前は、蓋垣、紳──────」
が、その直後紳士クンが、
「うわああああっ!」
と大声を上げ、それを慌ててさえぎった。
しかし兆太郎はひるまずこう続けた。
「お前、蓋垣紳士──────」
「うわおおおおおっ!あちょおおおっ!」
「おい!俺だよ!伴兆太郎だよ!」
「ええええっ⁉ど、どちらさまですかあああっ⁉」
相変わらずのイカツイ形相で詰め寄る兆太郎と、
それを必死に誤魔化そうとする紳士クン。
するとその時、いつの間にか兆太郎の背後に現れた静香が、
何故か右手に持っていた拡声器で、
「図書館では、お静かに願います!」
と、全く静かではない大音量で言った。
その声がまともに耳に直撃した兆太郎は、そのショックで失神してしまった。
一方咄嗟に耳を塞いで失神はしなかった紳士クンは、耳がキンキンしながらも、
とりあえず踵を返してその場から逃げ出した。
そして周囲に居た生徒達の視線が、その場に残った静香に集まる。
すると静香は拡声器のスイッチを切り、静かな声で改めて言った。
「図書館では、お静かに願います・・・・・・」




