8 本棚の前でよくあるシチュエーション
元々読書が嫌いではない紳士クンにとって、これだけ沢山の本がある図書館を回る事は、
なかなかに楽しいものだった。
そんな紳士クンの横を、見知らぬ一人の男子生徒がすれ違った。
実はこの図書館は男子部の生徒も使える事になっており、
この学園で唯一、男子生徒と女子生徒が同じ空間に居られる場所なのであった。
(本当だったら、ボクもあの制服を着てこの学園に通うはずだったんだよね・・・・・・)
男子が着こなず黒のブレザーを眺めながら、紳士クンはシミジミそう思った。
と、その時、不意に紳士クンの目に、
ちょっと興味の引かれるようなタイトルの本が映った。
ちなみにその本タイトルはこれだった。
『真のジェントルメンの心得』
(あの本を読めば、僕も少しは男らしくなれるかも)
紳士クンはそう考え、早速その本を読んでみる事にした。
が、その本は本棚の上の方にあり、紳士クンの目線から見て、
一メートル近く高い所にあった。
ぶっちゃけ体格が小柄な紳士クンが、手をのばして届く高さではない。
なので紳士クンは辺りを見渡し、踏み台か梯子はないかと探した。
しかしそれは見当たらず、仕方がないので紳士クンは、
自分の力でその本をゲットする事にした。
「えいっ!」
紳士クンはその場でジャンプした。
が、残念ながら本には手が届かなかった。
「うりゃっ!」
もう一度ジャンプする紳士クン。
しかし結果はさっきと同じだった。
なかなか手に入らないと、余計に手に入れたくなるのが人の心理。
紳士クンも、何としてもあの本を手に入れたくなっていた。
しかし何回ジャンプしても本に手が届かない。
もう少し高く飛べれば何とか届きそうではあったが、
スカートがめくれやしないかと気になる紳士クンは、
なかなか思い切りジャンプする事ができなかった。
(うぅ、こんな格好じゃなければ、もっと思い切って飛べるのになぁ・・・・・・)
そう考えると、この学園の女子部に通っている自分が改めて悲しくなってきた。
と、その時だった。




