7 ただの冗談
ズバリな事を指摘され、紳士クンは露骨にうろたえる。
(も、もしかして、ボクが男だっていう事がバレた⁉)
そう思ってパニックになる紳士クン。
すると静香は、右手を横に振りながらこう言った。
「あ、ゴメンナサイ。今のは冗談です」
「へ?じょ、冗談?」
「はい、ただの冗談ですから、どうか気を悪くしないでください」
「ベ、別にそれは、大丈夫ですけど・・・・・・」
(じゃあどうしてこの人は、ボクにあんな事を言ったんだろう?)
静香の真意が分からない紳士クンは、必死に考えをめぐらせた。
が、静香はそんな事に構わない様子で紳士クンに尋ねた。
「ところで、今日は何かお探しの本があるんですか?」
「え?ああ、いえ、暇つぶしにフラッと立ち寄っただけなんで」
「そうですか、それではごゆっくりどうぞ」
「は、はあ、どうも・・・・・・」
紳士クンはそう言って軽く会釈をし、静香の前から立ち去った。
(な、何だか不思議な人だったなぁ。あの人、ボクの正体に気づいているのかな?)
それが非常に気になるところではあったが、それ以上考えても仕方がないので、
紳士クンは図書館めぐりに専念する事にした。




