6 とても静かな迚摸静香
紳士クンがやって来たのは、男子部と女子部の校舎の間に建てられた、
エシオニア学園の図書館だった。
赤のレンガで作られた洋風の建物で、三階まであるそれぞれの階に、
沢山の書物が揃えられている。
学園のちょうど中央に位置する建物なので、紳士クンもこの図書館はよく見かけていたが、
実際に足を踏み入れるのはこれが初めてだった。
(ここなら静かに過ごせるよね)
そう考えた紳士クンは、早速図書館の中に入った。
建物の中は、背の高い本棚がギッシリと並んでいた。
(うわぁ~、一杯あるなぁ~)
そう思いながら感心していると、図書館の受付の所に座っていた女子生徒が、
「あら?あなたはもしかして、蓋垣さん?」
と言って、紳士クンに声をかけてきた。
「え?はい、そうですけど?」
紳士クンがそう言って受付の方に顔を向けると、
茶色いセミロングの髪を後ろでお団子の様に束ねた女子生徒が居た。
表情はあまり無く、眠いのかして目が半分閉じたようになっている。
声は笑美などとは真反対にか細くてハリがなく、何とも大人しそうな人物だった。
ちなみに紳士クンはこの女子生徒と顔見知りという訳ではなく、そんな彼女にこう尋ねた。
「どうしてボクの名前を?失礼ですが、何処かでお会いしましたっけ?」
すると彼女は小さく首を横に振り、こう答えた。
「いえ、ただ、あなたと顔がそっくりな人が同じクラスに居るので、
もしかしたら身内の方かと思って」
「ああ、それはボクの姉だと思います。」
「そうなんですか。私、二年の迚摸静香といいます」
「あ、ボクは一年の蓋垣し・・・・・・乙子といいます。
えと、姉がいつもお世話になっています」
紳士クンはそう言ってペコリと頭を下げると、
静香と名乗った彼女は、首を傾げながらこう言った。
「乙子さん、ですか?変わった名前ですね」
「そ、そうですか?」
「それに、どうして女子の制服を着ていらっしゃるんですか(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)?」
「えっ⁉」




