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紳士クンの、割と不本意な日々  作者: 椎家 友妻
第三話 紳士クンの再会
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5 怒るタッちゃん

「やっと見つけたぞ」

 という、低く冷たい声がしたかと思うと、令が、

 「イタタタタ!」

 と声を上げながら、紳士クンから体を離した。

一体何があったのかとそちらに顔を向ける紳士クン。

すると、いつの間にか背後に現れた太刀が、

令の右の耳たぶをギュウッとつねり上げていた。

 「痛い痛い!離してよタッちゃん!」

 泣きそうな声で太刀に訴える令。

その姿はまるで、姉に叱られる妹の様だった。

そしてその令の耳をつねる太刀は、怒りのこもった口調で言った。

 「いつもいつも生徒会の仕事をサボりおって!

お前には生徒会長としての自覚がないのか⁉」

 「ご、ごめんなさいぃ・・・・・・」

 (な、何か、凄い場面に出くわしちゃったなぁ・・・・・・)

 何やら見てはいけない光景を見てしまったという気持ちで、

紳士クンは二人のやりとりを眺めた。

そんな中太刀は、つねり上げていた令の耳たぶをようやく離し、

その痛みから解放された令は、耳たぶを両手でさすりながら言った。

 「うぅ~、今日のタッちゃん、いつにも増して乱暴ね・・・・・・」

 その言葉に太刀がすぐさま反論する。

 「それだけお前が私を怒らせるからだろうが!

生徒会の仕事をサボって何をしているかと思えば、

一年の女子生徒と白昼堂々イチャイチャと!」

 そして太刀は紳士クンを鋭く睨んだ。

 「ひっ⁉」

 睨まれた紳士クンは恐怖のあまりに背筋がピンと伸び、

そのまま動けなくなってしまった。

その紳士クンをかばうようにして、令が言った。

 「乙子ちゃんは私の大切なお友達なの。

そのお友達と仲良くして、一体何が悪いって言うの?」

 それに対して太刀は、全く無感情な口調でこう返す。

 「生徒会の仕事をサボるのが悪いと言うんだ」

 「そ、そんなごもっともな意見を・・・・・・・」

 全くの正論を言われ、たじろぐ令。

すると太刀は神妙な口調になり、こう続けた。

 「どうやらお前は随分とその生徒を気に入っているようだが、

この学園の生徒会長が、特定の下級生をひいき(・・・)にする事は感心せんな。

他の生徒の反感を買うかもしれんし、つまらん噂が立つ事だってありうる」

 「そんな噂が立っても、私は気にしないわよ?」

 「お前が気にするしないの問題ではない!とにかくさっさと生徒会室に戻れ!」

 太刀はそう叫ぶと、令の後ろ襟をムンズと掴み、そのまま引きずるように歩き出した。

 「ちょ、ちょっと待ってよタッちゃん!私まだ乙子ちゃんと一緒に居たいの!」

 「黙れ!そういう事は生徒会の仕事を片付けてから言え!」

 「あぁ~ん、乙子ちゃ~ん」

 というやりとりをしながら、令は太刀に引きずられていった。

その場に残された紳士クンは、とりあえずホッと胸を撫で下ろした。

 (た、助かった。一時はどうなる事かと思った・・・・・・)

 紳士クンがこの学園に入学してから約半月が経った今も、

彼の周りでは何かと騒ぎが絶えないのであった。

 (もう少し、平穏な学園生活を送りたいんだけど・・・・・・)

 日頃から切にそう願っている紳士クンだったが、その願いは今日も(はかな)く散ったのだった。

 「はぁ・・・・・・」

 紳士クンは大きな溜息をつき、近くの教室の窓から、中の時計を覗き込んだ。

それを見ると、昼休みはあと二十分程残っていた。

 (とりあえず、これからどうしよう?)

 腕組みをして考え込む紳士クン。

このまま笑美達の所に戻ってもよかったが、

さっきの事もあるので、今戻るのは危険に思えた。

 (何処か、一人でゆっくりできる所はないかな?)

 そう考えた時、

 (あ、そうだ、あそこに行ってみよう)

 と、ある場所を思いつき、早速そこに向かうべく、トコトコ歩き出した。



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