14 尻から手が出る程
旧校舎の中に入ると、外から見た程暗くはなく、
窓から差し込む日の光で、視界は極めて良好だった。
ただ、いかんせんホコリやゴミが散乱していて、
普通に呼吸をするだけでむせ返りそうになり、
ここに人が出入りしなくなってからの時間の長さがうかがえた。
こんな場所なら夜にでもなれば、
幽霊の一匹や二匹出てもおかしくなさそうな雰囲気ではある。
しかし今の紳士クンは、そんな事よりもトイレに辿りつく事が最優先課題となっていた。
幽霊に対する恐怖心を、紳士クンの便意が上回っているのだ。
玄関をくぐって廊下に出た紳士クンは、左右に伸びる廊下を見渡した。
どちら側にトイレがあるのか分からない紳士クンは、とりあえず右の方へ進む事にした。
そしてそのまま少し歩くと、二階へ続く階段の手前にトイレがあった。
紳士クンが喉から手が出る程
(この場合は尻から手が出ると表現した方がいいのだろうか)
求めていたトイレがあったのだ。
(ここなら絶対誰も来ないよね!)
そう確信した紳士クンは、早歩きでトイレに入った。
下手に走ると、アレがフライングしてしまいそうなのだ。
トイレの中の個室は、当たり前だが殆ど空いていた。
唯一一番手前の個室の扉が閉まっていたが、
紳士クンはそんな事は気にせず、その隣の個室に入って扉を閉めた。




