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紳士クンの、割と不本意な日々  作者: 椎家 友妻
第二話 紳士クンの乙子ちゃんな日々
33/103

13 旧校舎のトイレ

と、いう訳で紳士クンが連れてこられたその場所は、

教会の裏手にある、木造建築の古びた校舎だった。

 「ここ、なの?」

 その校舎を見上げながら、紳士クンは言った。

すぐ近くに教会が見えてはいるが、周囲は高くて深い林に囲まれており、

何やら学園とは全く隔離されたような所に、その建物は(たたず)んでいる。

 「そうよ」

 撫子は素っ気なく返事をし、スカートのポケットから鍵を取り出した。

そしてそれを校舎の正面玄関の扉に差し込み、ガチャリと鍵を開けた。

 「この校舎のトイレなら、女子生徒どころか人っこ一人来やしないから、

安心して入れるわよ」

 そう言って撫子は扉の取っ手に手をかけ、それをゆっくりと開いた。

するとギギィッという乾いた音とともに、扉の中から校舎の中の光景が現れた。

 まだ昼間だというのに、校舎の中はやけに薄暗く、

手入れがされていないせいか、ホコリがひどかった。

それを見た紳士クンは、率直な感想を言った。

 「な、何だか、お化け屋敷みたいな所だね・・・・・・」

 それに対する撫子の答えはこうだった。

 「みたいじゃなくて、実際にそうなのよ?」

 「ええっ⁉」

 驚きまくる紳士クンに構わず、撫子は続けて言った。

 「まぁ、あくまで噂だけどね。

この旧校舎は夜になると、昔ここで自殺した女子生徒の幽霊が出るらしいの」

 「そ、そんな噂がある所に、ボクは入らなきゃいけないの?」

 「大丈夫よ。その幽霊が出るのは夜らしいし、実際にその幽霊を見ても、

別に危害を加えられる訳じゃないらしいし」

 「で、でもボク、幽霊の類はちょっと・・・・・・」

 「このままオモラシ君になるよりはマシでしょうが」

 「お姉ちゃん、一緒について来てよぅ・・・・・・」

 「ダ~メ。私は今から生徒会の仕事で令お姉さまの所に行かなくちゃいけないから、

ここからは一人で行きなさい」

 「そ、そんなぁ・・・・・・」

 「はいこれ、この校舎の鍵よ。本当はここは立ち入り禁止だから、

トイレを済ませたらちゃんと鍵を閉めて、職員室に返すのよ?」

 そう言って撫子は紳士クンに校舎の鍵を渡し、スタスタと教会の方へ戻って行った。

 「うぅ・・・・・・」

 その場にポツンと残された紳士クンは、げんなりした顔で校舎の中を見た。

 (ど、どうしよう・・・・・・)

 この中に入れば、念願のトイレに堂々と入る事ができるが、

下手をすると、撫子の言っていた幽霊に出くわしてしまうかもしれない。

紳士クンは割とお化けの類を信じているので、

それだけに、その手のものに対する恐怖心も人一倍あった。

だがここで、紳士クンに残された道はふたつしかない。

 ひとつは、このままここでオモラシ君になるか。

 もうひとつは、この旧校舎のトイレで用を足すか。

 その時紳士クンのお腹が、ごぎゅるるる~と、

本格的にヤバイ事を知らせる警告音を鳴らした。

なので紳士クンは覚悟を決め、この旧校舎に足を踏み入れる事にした。



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