12 トイレの前の救世主
「こんな所で何してんのよ?」
と、そこに通りかかった姉の撫子が、お腹を抱えて悶える紳士クンに声をかけた。
「お、お、お姉ちゃん・・・・・・
じ、実は、ちょっとお腹が痛くなっちゃって・・・・・・」
額に冷や汗を浮かべながら答える紳士クン。
そんな紳士クンを見た撫子は溜息をつき、目の前にあるトイレを指差して言った。
「だったらさっさとトイレに行けばいいじゃないの。その為にここに来たんでしょ?」
「うぅ、でもたった今、愛雛先生がここに入って行ったから・・・・・・」
「あのねぇ乙子ちゃん?
前にも言ったけど、これから乙子ちゃんはここで三年間、
一日の半分をここで過ごすのよ?なのにそんな事をいちいち気にしてたら、
卒業するまでトイレに行けないわよ?」
「で、でもやっぱり、男のボクが女子トイレに入るのは──────」
「わ!バカ!そんな事言って誰かに聞かれたらどうすんの⁉」
撫子は慌てて紳士クンの口を塞いで辺りを見回した。
が、幸い周囲には誰も居らず、ホッと息をつき、撫子は紳士クンに言った。
「分かったわよ。そこまで言うんだったら、
他の人がまず来ないようなトイレに連れて行ってあげるわよ」




