11 『ウンコブリブリ左衛門クンの、割とオモラシな日々』
「う~ん・・・・・・」
紳士クンはお腹を抱えて唸っていた。
ただし、まだ排泄行為に及んでいる訳ではない。
今紳士クンが居るのは、校舎一階にある女子トイレの前。
一年生から三年生の教室がある二階から四階のトイレに比べ、
一階のトイレは人の出入りが少ないと考え、紳士クンはここまでやって来たのだ。
しかしつい先程、
紳士クンはこのトイレに入っていく二人の女子生徒を目撃してしまった。
もしそれがなければ、勢いでそのままこのトイレに駆け込むつもりだったが、
紳士クンの足はトイレの前でピタリと止まってしまった。
(あ、あの二人が出てきたら、今度こそ中に入ろう・・・・・・)
そう心に誓った紳士クンは、トイレの前で我慢強く待った。
そして数分後、先程トイレに入った二人の女子生徒が、
談笑しながら出てきた。
さっきからこのトイレの前で立っているが、ここに出入りしたのは、今の所この二人だけ。
(よし!今ならこのトイレには誰も居ない!)
そう確信した紳士クンは、いよいよ女子トイレに足を踏み入れるべく、
右足を踏み出そうとした。と、その時だった。
「う~!ヤバイヤバイ!」
と叫びながら、向こうの廊下から走って来る人物が居た。
その声の方に紳士クンが目をやると、
赤いジャージを着て眼鏡をかけたポニーテールの女性が、
こちらに向かって猛ダッシュで走ってきた。
ちなみにその女性は、体育教師にして紳士クンのクラスの担任の、
愛雛彩先生だった。
愛雛先生は何やらとても切羽詰った表情をしており、
教え子の紳士クンの姿に気づきもせず、そのまま目の前の女子トイレに駆け込んでいった。
「あ・・・・・・」
そう声を上げた時には、愛雛先生はトイレの中に駆け込んでいた。
紳士クンはまたしても、女子トイレに入るチャンスを逃してしまったのだ。
(ああ、こ、このままじゃあマズイよぅ・・・・・・)
そう、紳士クンは今とてもマズイ状態であった。
このままでは程なくして、ウンコブリブリ左衛門になってしまう事請け合いだった。
もしそうなれば、この作品のタイトルも、
『ウンコブリブリ左衛門クンの、割とオモラシな日々』
に変わってしまうであろう。それはそれで面白そうだが。
などと著者が悪ふざけをしていた、その時だった。




