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3 救世主現る

(うわあああっ!ファーストキスが男となんて嫌だよぅっ!)

 見た目が女の子でも中身はちゃんと男の子な紳士クンは、

(ちなみに体もちゃんと男である)

何とかこの状況から逃れようとした。

しかし兆太郎が思いっきり紳士クンの両肩を掴んでいるので逃げられない。

そして兆太郎の唇が、紳士クンの唇まであと数センチという所まで接近した!

紳士クンのファーストキスは、兆太郎に奪われてしまうのか⁉

と、思われた、その時だった!


 「うぉおりゃあああっ!」


 という叫び声とともに、兆太郎の背後から、猛ダッシュで近づいてくる人物が居た。

そしてその人物は高く飛び上がり、兆太郎の後頭部に、強烈な飛び蹴りを喰らわせた!

 「ぐはっ⁉」

 それをまともに喰らった兆太郎はそのまま前のめりにすっ転び、

目の前に居た紳士クンも、兆太郎と一緒に地面に倒れ込んだ。

 「うわあっ⁉」

 激しく背中を地面に打ち付けられ、ジンジンと痛い紳士クンだったが、

そのおかげで兆太郎とファーストキスを交わす事は免れた。

そしてその兆太郎は、今の飛び蹴りが余程効いたのか、

紳士クンの上に(おお)(かぶ)さったまま、白目をむいて気絶していた。

それを見た紳士クンはホッと息をつき、

自分より一回り以上大きい兆太郎の体を何とか押しのけて立ち上がり、

彼に飛び蹴りをお見舞いした人物を見やった。

 その人物はこの学校の女子の制服を着ていて、

身長は紳士クンよりも頭半分ほど高く、

髪型は紳士クンとほぼ同じショートヘアーで、

顔立ちも紳士クンとそっくり。

ただ、目じりがややタレぎみで優しそうな紳士クンに対し、

この人物の目じりはややつり上がっていて鋭く、

女子の制服を着ていなければ、男子にも見える風貌だった。

その人物に対し、紳士クンはこう言った。

 「あ、ありがとうお(・・)ちゃん(・・・)。助かったよ」

 そう、この人物は紳士クンのひとつ年上の姉で、

名前は(けだ)(かき) 撫子(なでしこ)という。

性格は、さっき兆太郎に何のためらいもなく飛び蹴りを喰らわせた事からも分かるように、

かなり男勝りな性格である。

そんな紳士クンの姉、撫子は、さも不機嫌そうな顔で声を荒げた。

 「助かったじゃないでしょ!何で男のあんたが男のこいつに告白されてんのよ⁉」

 実は撫子は近くの木陰で、

今の紳士クンと兆太郎のやりとりを全て見ていたのだった。

それに対して紳士クンは、苦笑いしながらこう返す。

 「な、何でだろう?」

 そんな紳士クンに撫子はまた声を荒げた。

 「何でだろう?じゃないわよ!

あんたが男なのに女みたいに振舞うからじゃないの!」 

 「ううっ、ボク、そんなつもりないよぅ・・・・・・」

 姉の厳しい言葉に、まるで女の子のように瞳を潤ませる紳士クン。

その仕草が、撫子の声を更に荒げさせた。

 「言ってるそばから女みたいになってるじゃないの!

そんな事だから小さい頃からずっとイジメられるし、

今日みたいに同性から告白されるのよ⁉

これはあんたが女みたいな男だって証明されたようなものじゃないの!」

 「ええっ⁉そ、そんなぁ・・・・・・」

 紳士クンはそう言ってしょげ返ったが、

幼い頃から『女男』、

『オカマちゃん』、

『オカマバーのホステスさん』などと言われてイジメられ続けてきた事は、

紳士クンにとって、消したくても消せない事実だった。

そしてそんな紳士クンを虐める輩を男らしくやっつけてきたのが、

他でもないこの撫子なのである。



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