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紳士クンの、割と不本意な日々  作者: 椎家 友妻
第二話 紳士クンの乙子ちゃんな日々
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8 目ではなく胸を覆うパターン

「だ~れだっ⁉」

 という元気な声が紳士クンの背後からして、ふたつの手が現れた。

普通ならば『だ~れだ?』と言って背後から手が現れれば、

その手は前の人の目元を覆うものだが、紳士クンの背後から現れたそれは、

目元ではなく紳士クンの胸を掴んだ。

 「のわぁっ⁉」

 突然の事に驚く紳士クン。

すると次の瞬間背後の人物が、そのまま紳士クンの右肩に自分のアゴを乗せた。

そしてその人物の顔を見た紳士クンは、再び驚きの声を上げた。

 「え、笑美さん⁉」

 そう、その人物とは、紳士クンが今朝友達になった、元気印の笑美だった。

その笑美が、口先を尖らせながら紳士クンに言った。

 「何で一人でさっさと教室を出たん?せっかく一緒に行こうと思うたのに」

 「そ、それは、色々あって・・・・・・。

あの、それより、その手を離してくれない?」

 紳士クンは、自分の胸を大胆に触っている笑美にそう頼んだ。

しかし笑美はいたずらっぽい笑みを浮かべ、

 「あかん。ウチをおいてけぼりにしたバツや」

 と言って、そのまま紳士クンの胸を撫で回し始めた。

 「わあっ⁉何するの笑美さん!」

 笑美の大胆な行動に、パニックになる紳士クン。

しかし笑美は同性の友達に対するじゃれあいのつもりでいるので、

何の遠慮もなくその行為を続ける。

 「乙子ちゃんは結構小ぶり(・・・)なタイプなんやな~。

でもブラはちゃんと付けた方がええんとちゃう?」

 「うぅ・・・・・・」

 笑美の言葉に対し、紳士クンはただ黙って俯く事しかできなかった。

元々女の子に対する免疫力が低い紳士クンにとって、

笑美の撫で撫で攻撃は色んな意味で刺激が強すぎた。

 (も、もう、ダメ・・・・・・ボク、このままじゃあ・・・・・・)

 と、紳士クンがどうにかなってしまいそうになったその時、

 「ま、小ぶりなのは私も一緒やしね。今日のところはこれくらいでカンベンしてあげる」

 と言い、笑美はようやっと紳士クンの胸から両手を離した。

 (た、助かった・・・・・・)

 心底そう思いながら、紳士クンは両膝に手を付き、ガックリとうなだれた。

何だか三年くらい寿命が縮んだ気分だった。

一方笑美はそんな紳士クンを満足げに眺めた後、

 「さて、ウチもそろそろ着替えよ」

 と言って、ワンピースの制服をガバッと一気に頭から脱いだ。

 「わぁああっ⁉」

 それを目撃してしまった紳士クンは、またまた叫び声を上げた。

笑美は紳士クンに背を向けて脱いだので後姿しか見えなかったが、

それでも笑美の下着がバッチリ紳士クンの目に飛び込んできた。

 「ご、ゴメンナサイ!」

 紳士クンはそう叫ぶと同時に、更衣室から飛び出して行った。

一方何でいきなり紳士クンが更衣室から飛び出したのか全く分からない笑美は、

 「どうしたんやろ?」

 と呟いて、首を傾げるしかなかった。



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