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紳士クンの、割と不本意な日々  作者: 椎家 友妻
第二話 紳士クンの乙子ちゃんな日々
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4 令の真意

そんなこんなで、紳士クンがこの学園に入学してから、丁度一週間が経った。

幸い(と言っていいのかは分からないが)

紳士クンは顔つきも体格も女子と何ら変わりはないので、

周囲の女子生徒達には全くバレる事もなく、普通に女子生徒として過ごしている。

 (はあ、ボクは将来、どんな人間になっちゃうんだろう・・・・・・)

 そう考えて溜息をつくのが、最近の紳士クンの日課となっていた。

そんな紳士クンが靴箱の所で上履きに履き替えていると、背後から、

 「ごきげんよう、乙子ちゃん♡」

 と声をかけられた。

その声に振り向くとそこに、ニッコリと微笑んだ令が立っていた。

 「あ、ご、ごきげんよう・・・・・・」

 その令に、ややひきつった笑みで挨拶を返す紳士クン。

すると令はニコやかに続けた。

 「この学園にはもう馴れた?」

 それに対して紳士クンは、今の気持ちを正直に吐き出す。

 「え~と、どうしてボクがここに居るのかが、未だに分からないんですけど・・・・・・」

 「ああ、そうね。この事は、ちゃんとあなたに話しておいた方がいいわね」

 令は一転して真剣な顔になって言った。

 「え?な、何か重大な理由があるんですか?」

 令の真剣な面持ちに、紳士クンは息を飲んだ。

そんな紳士クンに、令はゆっくりとした口調で語り出した。

 「どうして私が、本当は男子部の方に入学するはずだったあなたを、

女子部の方に半ば無理矢理入学させたのか?」

半ばじゃなくて、完全に無理矢理だと思うんですけど、

と言いたかった紳士クンだが、ここはグッと我慢をした。すると令は、

 「それはね・・・・・・」

 と言って、ここで意味深に言葉を切った。

まるで、今から話す事実が、さも重大であるかのように。

その何とも言えない緊張感に耐えられなくなった紳士クンは、

次の言葉を(うなが)すべく聞いた。

「そ、それは、何なんです?」

 それに対して令は、紳士クンの目を真っ直ぐに見据え、こう言った。


 「何だか、面白そうだったから」


「えーっ⁉」

 令の言葉の内容は衝撃的でも何でもなかったが、

それがむしろ紳士クンには衝撃的だった。

 「そ、そ、そんな理由でボクを女子部の方に入学させたんですか⁉」

「乙子ちゃんは女の子の制服を着た方が似合うし、女子部の方に入学した方が、

私が楽しい学園生活を送れると思ったのよ。」

 「令お姉さまだけが楽しんでどうするんですか⁉ボクの意思は⁉」

 「大丈夫よ。乙子ちゃんも存分に、ここでの学園生活を楽しんでくれればいいから」

 「そ、そういう問題じゃなくてですね・・・・・・」

 「じゃあ私、そろそろ行かなくちゃいけないから、また後でね」

 令はそこまで言うと、さっさと校舎の廊下を歩いて行ってしまった。

その後姿を紳士クンは、呆然とした表情で見送る他なかった。



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