1 紳士クンにフラれた原因
雲ひとつない、よく晴れた朝。
一人の男子生徒がエシオニア学園の正門をくぐり、
男子部の校舎に向かい、緑が豊富に茂る庭園を歩いていた。
太くてつり上がった眉毛、
イカツイ目つき、
長身の体に鍛え上げられた筋肉。
そしてこの学園の制服である黒のブレザーをまとったその姿は、
どう見てもカタギの人間には見えない。
その男の名は、伴兆太郎。
プロローグで、主人公の紳士クンに愛の告白をした男だ。
彼は、
ホモだった。
しかし、自分の想いをストレートに伝えた事も実らず、
(むしろそれが失敗の原因のひとつなのだが)
彼は紳士クンにフラれてしまった。
紳士クンに本気で想いを寄せていた兆太郎にとって、
その出来事は、今までの人生で最もつらいものだった。
少々の事では泣いたりしない兆太郎だが、この時ばかりは、
その日の夜にベッドの中で枕に顔を埋め、泣いた。
そして彼は考えた。
どうして自分は紳士クンにフラれてしまったのか?
自分には一体何が足りなかったのか?
結論から言うと、
兆太郎が紳士クンと同性だったというのが一番の原因なのだが、
(問題にならないケースも勿論ある)
この時兆太郎は、自分が紳士クンにフラれた原因をこう考えた。
男らしさが足りなかった。




