16 令の思惑通り
ひきつりそうになる顔を何とか平静に保ちながら、紳士クンはそう言った。
だが決して彼はそれを望んだ訳ではない。
そう、仕方がなかったのだ。
西郷さん的な口調で言うと、仕方がなかったのでごわす。
「まあ、そういう訳なんです・・・・・・」
紳士クンの言葉を受け、撫子が太刀に言った。
しかし太刀は、まだ納得がいかないという表情をしている。
そんな太刀に、令がさも嬉しそうな顔で言った。
「これでハッキリしたわね。乙子ちゃんはやっぱり女の子なのよ。
それともやっぱり、乙子ちゃんの裸が見たい?」
「そ、そんな訳あるか!もういい!好きにしろ!」
太刀は吐き捨てるようにそう言い、踵を返してズカズカと聖堂の奥の方へ戻って行った。
「た、助かったぁ・・・・・・」
太刀の後姿を眺めながら、心底ホッとしたように撫子が呟いた。
「ウフフ、タッちゃんは凄く規律を重んじる人だから、
もし乙子ちゃんが男の子だったら、大変な事になっていたわね」
「ええ、マッタクです。誰かのおかげでね」
白々しく言う令に、撫子は皮肉たっぷりにそう返したが、
令は全く気にしていない様子だ。
そして一方の紳士クンは、そんな令と撫子のやりとりを呆然と眺めながら、
(これからボク、どうなっちゃうの?)
と、頭の中で何度も繰り返していた。
その紳士クンの肩にポンと手を置き、撫子は言った。
「まあ、その、そういう訳だから・・・・・・」
「そ、そういう訳って、どういう訳なの?」
泣きそうになりながら尋ねる紳士クンに、令が満面の笑みで言った。
「今日からあなたは女子部の(・)生徒なのよ。乙子ちゃん♡」
「・・・・・・」
それを聞いた紳士クンは、その身にまとった制服の色の様に、頭の中が真っ白になった。
かくして当物語の主人公、蓋垣紳士クンは、蓋垣乙子ちゃんとして、
エシオニア学園の女子部に入学する事となった。
果たして紳士クンは将来、立派なジェントルメンになる事ができるのか?
う~ん、
ちょっと、
難しいかもしれない・・・・・・。




