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2 番長の告白

「は、はひぃっ!」

 反射的に返事をした紳士クンは、恐怖で声が裏返ってしまった。

それが気に障ったのかどうかは分からないが、

兆太郎はもう一度紳士クンの名前を呼んだ。

 「蓋垣ぃっ!」

 「は、はひぃっ!」

 再び声が裏返る紳士クン。

しかし兆太郎は構わずこう続けた。

 「俺はなぁっ!」

 「は、はひひっ!」

 「お前がっ!」

 「ひ、ひぃいっ!」

 (ボ、ボクが、何なの⁉)

 殺したいほどムカツク。

男のクセに女みたいなのがウゼェ。

ツベコベ言わずに金寄こせ。

等々、紳士クンの脳裏に様々な言葉がよぎった。

しかし兆太郎が次に言った言葉はそんな事ではなく、これだった。


 「好きだぁっ!」


 「・・・・・・へ?」

 頓狂(とんきょう)な声を上げ、目を丸くする紳士クン。

兆太郎が今何を言ったのか、言葉自体はよく聞こえたが、

その意味が全く分からなかった。

 (え?好きって、どういう事?

ケンカ番長の伴君が、ボクの事を好き?え?え?)

 考えれば考える程、紳士クンはパニックに陥った。

そんな紳士クンにトドメ(?)をさすように、兆太郎は再び叫んだ。

 「俺の!恋人になってくれぇっ!」

 「えええええっ⁉」

 そのあまりにストレートで予想外な兆太郎の告白に、

紳士クンはさっきとはまた違う意味で怖くなった。

こんな事なら、痛い目にあわされたり、

お金を巻き上げられた方がずっとマシだと思った。

 紳士クンはその女の子のようなルックスのせいで、

小さい頃からよく周りの友人にからかわれたりイジメられたりしていたが、

同性から愛の告白を受けたのは初めてだった。

今まで受けてきたイジメの数々も、それなりに紳士クンの心を傷つけてきたが、

今のこの出来事は、そんな過去のトラウマをゴボウ抜きにするほど、

紳士クンに大きなショックを与えた。

ましてや告白をしてきた相手は、太い眉毛にイカツイ顔つきのケンカ番長。

紳士クンのショックもひとしおのものだろう。

さて、そんな中、紳士クンに自分の想いを伝えた兆太郎は、

頬をにわかに紅く染め、今度は声を潜めてこう続けた。

 「俺の気持ち、受け取って、くれるよな?」

 (い、嫌です!)

 紳士クンは心の中で即答したが、

それを言葉として口から出せなかった。

もしここで下手に断ったりしたら、

この男にとてつもなくひどい目にあわされるかもしれない。

そんな恐怖が、紳士クンの口をつむがせてしまうのだった。

 俯いて黙り込む紳士クン。

そんな紳士クンの態度を見て取った兆太郎は、何かを察したようにこう言った。

 「何も言わずに俯くって事は、俺の恋人に、なってくれるって事なんだな?」

 「どえぇっ⁉」

 兆太郎は、自分に都合よく解釈する能力も番長クラスなのだった。

 「じゃあ、いいよな?」

 と、自分に都合よく解釈した兆太郎は、

紳士クンの肩を掴んだ両手にグッと力を込め、

そして目を閉じ、唇を尖らせ、ゆっくりと紳士クンの顔に、

自分の顔を近づけ始めた。

これはつまり、兆太郎が紳士クンにキスを迫っているのだ。

 それを悟った紳士クンは、

 「ぎゃああああっ!」

 と、なりふり構わぬ悲鳴を上げた。

しかしそんな事では兆太郎のキスアクションは止まらず、

どんどん紳士クンの唇めがけて迫ってくる。

その光景は紳士クンにとって、恐怖以外の何物でもなかった。

この様子を想像しながら書いている著者自身、かなり恐ろしくなっているのだ。

それを思えば、当の紳士クンが味わっている恐ろしさといったら奥さん。

 なんて言っている間に兆太郎と紳士クンの唇が、

あと少しで重なってしまうという距離まで近づいてきた。

このままでは紳士クンの唇が、兆太郎に奪われてしまう。

そしてそれが紳士クンのとっての、ファーストキスでもあるのだった。



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