13 撫子が嘘をつく時のクセ
撫子の言葉に泣きそうになる紳士クン。
目の前の太刀が放つ殺気からしても、その言葉は大げさなものではないようだった。
「何をコソコソ話している?」
その太刀が、撫子に鋭い目を向けて言った。
それに対して撫子は、両手をブンブン横に振って答えた。
「い、いえ、これは、この子にここでの立ち居振る舞いを教えていたんです!」
「だが今そいつは、自分の事を男だと言わなかったか?」
「そ、それは・・・・・・」
太刀のツッコミに撫子は一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに思いついたようにこう言った。
「お、男じゃなくて、乙子です!乙女の乙に子と書いて乙子!
だからこの子は、正真正銘の女なんです!」
(ええっ⁉)
心の中で驚きの声を上げる紳士クンだったが、
これは勿論撫子が咄嗟についた嘘だった。
しかしそれに対する太刀の言葉はこうだった。
「撫子、お前、嘘をついているな?」
「え⁉う、嘘なんかついてませんよ⁉
わ、私が嘘をついているように見えますか⁉」
「見える」
撫子の必死の訴えに、太刀はあっさりと答えた。
そして撫子の目元を指差しながらこう続けた。
「お前は嘘をつく時、左の目尻がひきつるからな」
「えっ⁉」
そう指摘された撫子の左の目尻は、確かにピクピクひきつっていた。
それは、長年一緒に暮らしてきた紳士クンも気づかなかった事だった。
撫子はそれを慌てて隠したが、時既に遅しなのは、火を見るより明らかだった。
「さあ、本当の事を言え」
撫子に木刀を突きつけ、太刀は言った。
「言わなければ、お前自身も粛正粛清の対象になるぞ」
「うう・・・・・・」
今まで何度も紳士クンのピンチを救ってきた撫子だが、
今回ばかりは流石に口をつぐんだ。




