表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紳士クンの、割と不本意な日々  作者: 椎家 友妻
第一話 紳士クンの入学式
16/103

12 泣く子も黙る鎌井太刀

その声を聞いた撫子は、

 「ひぃっ!」

 と声を上げ、紳士クンが今まで見た事もないような怯えた表情で、

その声の主の方へ振り向いた。

するとそこに、細身で手足が長く、やや青みのかかったストレートの黒髪を、

腰の辺りまで伸ばした女子生徒が立っていた。

目つきはかなり切れ長で鋭く、まるで、磨きぬかれた日本刀の様な威圧感があった。

 そんな彼女の前ですっかり縮み上がった撫子は、おずおずと彼女に言った。

 「ス、スミマセン太刀(たち)お姉さま。これは、あの、何でも、ありません・・・・・・」

 「・・・・・・」

 露骨にうろたえる撫子に、太刀と呼ばれた彼女は無言で疑いの目を向けたが、

すぐに隣の紳士クンに気がつき、こう言った。

 「撫子の隣に居るのは、()か?」

 (い、妹⁉)

 いくら今女子部の制服を着ているとはいえ、何の疑いもなく女扱いされた事に、

紳士クンは大きなショックを受けた。

しかしそんな中、撫子が次に言った言葉はこれだった。

 「は、はい、この子は今日からここに通う事になった、私の()です・・・・・・」

 「ええっ⁉ボクは男──────モガッ⁉」

 姉のまさかの発言に、紳士クンは思わず声を上げたが、その口を再び撫子が塞いだ。

しかし、紳士クンがチラッと言った『男』という言葉に、太刀が鋭く反応した。

 「男?男だと?まさかお前、本当は男なのか?

男の身でありながら、この聖堂に足を踏み入れたのか?

もしそうならば──────」

 と、太刀はおもむろに右手を背後に回し、後ろ襟から背中に手を入れ、

そこから細長い物を取り出した。

ちなみにそれは木刀であった。

そして太刀はその木刀の切っ先を紳士クンに向け、こう続けた。

 「粛清(しゅくせい)する」

 そのあまりの迫力に、紳士クンはそれ以上何も言えなかった。

そんな紳士クンに、撫子が小声で耳打ちをした。

 「ここは下手に逆らわない方がいいわ。

この聖堂は男子絶対禁制の場所だから、もしあんたがここで男だって事がバレたら、

副会長の鎌井(かまい)太刀(たち)お姉さまに、半殺しにされちゃうわよ?」

 (そ、そんなぁ・・・・・・)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ