7 連れて来られた場所は・・・・・・
「着いたわ、ここよ」
校舎二階のとある一室の前まで来た所で、令は紳士クンにそう言って立ち止まった。
「こ、ここ、ですか?」
令のかたわらで立ち止まり、その部屋の扉の上を見上げる紳士クン。
その扉の上にはプレートが貼られていて、そこにこう書かれていた。
『エシオニア学園女子部・生徒会室』
その文字を読み取った紳士クンは、疑問に思ったいくつかの事を、令に聞いてみる事にした。
「あの、ここ、職員室じゃあ、ないですよね?」
「そうね」
ちなみに職員室は、男子部女子部ともに、それぞれ校舎の一階にある。
紳士クンは続けて聞いた。
「それにこの校舎、男子部じゃなくて、女子部の校舎ですよね?」
「そうね」
エシオニア学園は、校舎が男子部と女子部に完全に分けられており、
男子が女子部の校舎に、そして女子が男子部の校舎に入る事は、厳しく禁じられている。
「あの、男のボクがこっちの校舎へ来るのって、マズイんじゃないですか?」
「見つかったら懲罰ものね」
「・・・・・・えと、それなのにどうして凄茎会長は──────」
「令お姉さまとお呼び」
「は、はいっ。えと、令お姉さまはどうして、ボクをこんな所に?」
紳士クンのその質問に対し、令は最大級の妖しい笑みを浮かべて言った。
「楽しい事を、する為よ♡」
「た、楽しい、事・・・・・・?」
絶世の美女にそんな事を言われると、普通の男なら、
あんな事やこんな事、更にはそんな事まで想像や期待をしてしまうが、
この状況の紳士クンは、むしろ全く逆の、何かよからぬ事が起きそうな不安を抱いていた。
そしてこのままここに居るのは危険だと直感した紳士クンは、
「あの、せっかく誘ってもらって申し訳ないんですけど、
ボク、男子部の入学式に出なきゃいけないんで、これで失礼します!」
と言って踵を返し、令の前から立ち去ろうとした。
そんな紳士クンを令は、
「逃がさないわよ」
と言って、ガバッと背後から抱きすくめた。
「わわわっ⁉ええええっ⁉」
撫子以外の女性にこんな風に抱きすくめられた事のない紳士クン
(ただし撫子の場合は、
背後から羽交い絞めやヘッドロックをされる事がほとんどである)は、
心臓が飛び出る程に驚いた。