2 転校はできない
「お・と・こ・ちゃ~ん♡つ~かま~えたっ♡」
と言いながら、令が背後から紳士クンに抱きついてきた。
「わわっ⁉令お姉様⁉」
「真剣な顔で何を話してたの?私もまぜて♡」
「令お姉様、実はボク、この学園を──────」
と、紳士クンが令に言おうとしたその時、
「ん?この学園を、どうするんだ?」
そう言って令の背後から太刀も現れた。
「どわぁっ⁉太刀お姉様まで⁉」
「うむ、私達も今帰るところだ。
ところで乙子、お前もうちの生徒会執行部に入らないか?
今日のお前の働きは実に見事だった。
お前ほどの度胸のある者が、我が生徒会執行部には必要なんだ」
「えええっ⁉そんなの無理ですよ!それにボクはこの学園を──────」
「だったら生徒会に入りなさいな♡そうすれば毎日私と会えるから♡」と令。
しかし紳士クンは両手をブンブン横に振って訴える。
「そ、それも無理ですって!」
「まあそう言うな。私もお前の事が気に入ったのだ。これからは仲良くしようじゃないか」
そう言って太刀は、紳士クンの首に右腕を回す。そして令も、
「これからもよろしくね♡乙子ちゃん♡」
と言って、紳士クンに抱きついた。
「わ!わ!やめてください二人とも!」
令と太刀に挟まれた紳士クンは、顔を真っ赤にしながらそう言ったが、
令と太刀がそれを聞き入れる様子は全くなかった。
そしてそれを傍らで眺めていた撫子は、心の中でシミジミこう思った。
(少なくともこの二人が卒業するまで、紳士はこの学園を辞められそうにないわね)
そう、紳士クンのこの学園での生活は、まだ始まったばかりなのだ。
頑張れ紳士クン!
負けるな紳士クン!
そんな紳士クンが、今心の中で思っている事はこれだった。
(ボクって将来、男らしい男になれるのかなぁ?)
・・・・・・さぁ・・・・・・。
紳士クンの、割と不本意な日々 完