1 紳士クン、転校?
その日の放課後、紳士クンは撫子とともに学園を出て、帰宅の途についた。
そしてその帰り道に、撫子が紳士クンに言った。
「今日は、ありがとね。あそこであんたが助けてくれなかったら、私はどうなっていたか」
「お姉ちゃん、あの時泣いてたもんね」
紳士クンがからかうように言うと、撫子はにわかに顔を赤らめながら言い返した。
「あ、あれはホントに怖かったのよ!
あんたはよくナイフを持った犯人に飛び掛っていけたわね?」
「ああ、あの時は、とにかくお姉ちゃんを助けなきゃって、無我夢中で」
紳士クンがそう言って笑うと、撫子は夕暮れの空を見上げ、シミジミと言った。
「今までのあんたなら、絶対にあんな行動はできなかった。
私の知らないうちに、随分と成長したのね」
「そ、そうかな?」
「うん。ちょっと男らしくなったよ」
「そ、そんな事ないよ。あ、あはは」
と、照れくさそうに笑う紳士クン。
そんな紳士クンに、撫子はボソッとこう続けた。
「見た目は相変わらず女みたいだけど」
「うっ・・・・・・」
一転して落ち込む紳士クン。
それは見た撫子はクスッと笑い、すぐに真剣な顔になってこう言った。
「ねぇ、紳士、もしこの学園に通い続けるのが嫌なら、
思い切ってここを辞めて、他の学校に男子生徒として転校したらどう?」
「て、転校?」
撫子の言葉に、紳士クンはそう呟いて黙った。
確かに紳士クンは、今までこの学園を辞めたいと何度も考えた。
しかし、笑美や華子、それにひとつ年上の静香といった友達もできて、
この学園での生活が、少しずつだが楽しくなってきた事も事実だった。
だが、紳士クンの心の中は、もう決まっていた。
(ボクはやっぱり、男らしい男になりたい!)
そう思った紳士クンは、撫子に向かって言った。
「お姉ちゃん!ボク、この学園を辞──────」
と、その時だった。