25 エゲツナイ一撃
「お前が(・)死ね(・・)」
そう言ったのは、背中から木刀を抜き、
隠子に向かって突進を開始していた太刀だった。
完全に紳士クンの方に気をとられていた隠子は、太刀のその動きに反応できず、
「しまった──────」
と隠子が言うと同時に、その脇腹に太刀の木刀が炸裂した!
ボキィッ!
完全に何かが折れた音が響き、隠子は悲鳴を上げる間もなく近くの壁に激突し、
そのまま床に崩れるように倒れた。
幸い隠子が紳士クンをナイフで切りつけるより、太刀の木刀が一瞬早かったので、
紳士クンは前髪を数本かすめられた程度で済んだ。
一方の隠子は相当のダメージのようで、床に倒れこんでからピクリとも動かない。
その隠子の後ろ襟を掴み、引きずるように持ち上げた太刀は、
口元に笑みを浮かべながら紳士クンに言った。
「怪我はないか?」
「あ、だ、大丈夫です。ハイ」
そう言いながら頷く紳士クン。
さっきの太刀の凄まじい一撃を目の当たりにした紳士クンは、
それまでの怒りなど何処かへ吹き飛び、改めて太刀の恐ろしさを実感した。
(や、やっぱりこの人は敵に回しちゃダメだ。
ていうか盗撮犯の人、もしかして死んじゃったんじゃ?)
と、冗談抜きで隠子の生死を心配していると、
「うわああんっ!」
と泣き叫びながら、撫子が紳士クンに抱きついてきた。




