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その男の称号は「最強」  作者: ぽろっく
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物心がつくってこんな感じなの?

 グラブ王国の北東の端っこ、背に連なる雪山はニブルヘイムの背中と呼ばれる(本名称はヘイム連山群)、かつて存在していた四龍の内の1体、氷獄龍ニブルヘイムが長き眠りについている姿であるとよばれており、あまりに長い睡眠期間から人類史の中ではただの山であるという説が一般的となっているが、人類黎明期の古文書では四龍の背であるという記載が散見され、考古学者の間では常に論争の中心にある。

 そんな山に囲まれているニブ村という寒村がある。50人程の住人が住み、主にニブルヘイムの背中に出る毛皮付きの動物を狩って、生計を立てている村だ。


 「ウォルフ、この怪我は?」

 「道歩いてたら転んじゃって、気をつけるよ父さん」

 「母さんに似てドジなんだな。気をつけるんだぞ、うっかり谷底にでも落ちられたら堪らんからな」


 いつもこうやって誤魔化してるけど、僕がいじめられてることには気づいていない。

 気づいて欲しいとも思わない、だって父さんは本当にすごいんだから。


 「おいクソウォルフ!ペテン師ヒーローのパパに助けてもらったらどうなんだぁ?」


 村のガキ大将ガジンに僕はお尻を蹴飛ばされる。

 思わず地面に倒れ込みうぐぅと声をあげてしまうが、そんなのはどうだって良い。


 「父さんはペテン師なんかじゃない!本当に氷蜥蜴を倒したんだ!」


 「あのね、ウォルフくんさあ。氷蜥蜴って冒険者ランクCでも倒すのが難しいって言われてるのよ。それをただの農民である貴方のお父上が本当に倒せると思って?」


 取り巻き兼村長の娘のエリナも一緒になって父さんの事を嘘つき呼ばわりする。ガジンの事が好きなんだ。

 

 「だから父さんは元ランクBの冒険者なんだって大人たちもみんな言ってるじゃないか!」


 大人の人達は皆それで納得してくれてるし、事実父をヒーロー扱いしているのだが、この2人には納得がいかないらしい。


 「あのなぁクソウォルフ。俺は優しいから丁寧に教えてやるけど、冒険者ってのは滅茶苦茶大変な仕事なんだよ。あんなヒョロヒョロのオヤジが元冒険者ランクB?笑わせんなって!」


 「父さんは魔法使いなんだ!治らない怪我をしてこの村に帰ってきたんだから、細くたってしょうがないだろう?無理して魔法を使うと最悪死んじゃうんだよ!」


 ガジンはニヤニヤしながらこちらに近づき、僕の腹に蹴りを入れてくる、何発も。

 ガジンの父親は屈強な肉体を持った元ランクDの冒険者で、父さんの後輩らしい。ガジンは何故こんなにも強そうな父が僕の父さんみたいに弱々しい人に頭を下げているのかわからないし、気に食わなかった。

 それで僕にいじめという形で不満をぶつけてくるのだ。


 「じゃあお前はランクB冒険者の息子なのに、何でこんな弱えんだよ!!」


 ガジンがさっきよりも力を込めて蹴りを入れてくる。意識がぼんやりとして、あぁ・・・


 流石のエリナもこれ以上はまずいと思ったのか顔を少し青ざめさせ、ガジンを止めようとする。

 

 「ねえ、これ以上はまずいって」

 

 ガジンは止めようとするエリナを振り払い近くにあった木の棒でウォルフを思い切り叩きつけようとした。


 これでこいつが死んだって、嘘をついたお前の親父が悪いんだ!ざまあみろ!大きく両手を振り上げ、ウォルフの頭に思いっきり!


 「っ!」


 意識がはっきりしたウォルフは片腕に力を込め、無理やり起き上がる。今にも当たりそうな木の棒をウォルフの細い手を刀の様にし、ガジンの手のすぐ上の部分で切り取る。


 ガジンとエリナは数秒の間固まってしまう。


 「は?」「え?」


ーーーーーーーーーー


 いやあ初めてです。物心がつくってこういう感じなんですね。俺・・・僕は転生しました、物心がついた瞬間に。

 このウォルフ少年、まあ自分なんだけど、の情報が最初から全てを知っていて、どういう状況なのかも全てわかっている。すごい違和感がある状況なのに全く違和感のないこれが転生なのか、しかしあれだな。自分の今置かれている状況を考えるとウォルフ少年が不憫でならない、まあ自分なんだけど。



 僕はさっき倒された時についた土を払いながらガジンの方へ向き直る。


 「その辺にしときなよガジン。これ以上やるならBランクの息子の力、見せてやるよ」


 「え?おまえ?え?」


 ガジンはどうやら混乱している様だ。まあ僕も混乱してるよ、転生がこんないきなりだとも聞いてないし、気づいたら数年生きてましたみたいな感覚。


 「ガジン!私の家であそびましょ!早く!!」


 「お、おう」


 エリナは咄嗟にポカンと立ち尽くすガジンの手首を掴み走り去ってしまう。ひとまずこれで解決してくれると良いんだけど、、、

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