軽井沢編6 ラストサムライ
初夏のある日
アルバイトのゴルファーズロッジが険悪なムードになっていた。
前回話した、熊木と入り浸り男との諍いだ。
大体初夏になると段々とアルバイトが増えていき、今までの平和が崩れる。
のほほんと恋愛していた奴らは色めき立ち、新しい人間に目移りするし、モテなくて勘違いしていた奴は目を覚ますことになる。
だから、人が増えれば先ず「色恋」で揉め事が発生して、そこから金銭の問題、いじめ問題、等々が必ず発生する。
僕のいたRESORTとはそういう人間が働いている場所だった。
勿論
社員になって、寮を出て家庭が出来れば少しは落ち着くので、トラブルは極端に減るが。
僕とスエさんで様子を見るという事で集まった。
スエさんは何か持っている。
「スエさんそれなに?」
「え?一応、木刀持ってきた」
面白い人だっと思った。
問題の部屋に行ってみると、やっぱりその男は出てこない。
何回も書いているが、僕はこういう女の部屋に入り浸る奴が嫌いなので、関係なく部屋に入っていった。
ボロい寮なので鍵なんて簡単に開いた。
そいつは木刀に驚いていたが、先ず部屋の外に引っ張り出し、説教した。
驚くほど素直だったが。
散々脅して後は恋愛の事だから熊木との話し合いに任せた。
女の子も納得していたようだった。
この後はどうなったか解らなかったが、意外とみんなで仲良くなり飲み会や花火を楽しんだ。
若さってそんなもんだ。
少し季節は遡って、4月にあったことを書き忘れていた。
休日に町に降りて買い物をして、車で峠を登っていると、一台の原付が下りて来た。
ん?????
峠に原付は滅多にいない。
しかもまだ少し雪が残っているのでなおさらだ。
速度を落としてよく見ると、原付の割には大荷物を抱えている。
那須君???
疑問を残し通り過ぎたが、後からすぐに確認したら、やはり那須君だった。
彼はどうやら戦力外通告を受け、実家の埼玉に帰るという事だった。
車の免許を諦め、原付の免許を一日で取り、50ccのスクーターを買っていたのだ。
知らなかった・・・
そのスクーターで持てるだけの荷物を抱え、群馬の山から埼玉へ帰っていく・・・・
まさに侍の所業を目の当たりにした。
どうやら、「副社長」になる夢は叶わなかったようだ。
無事元気でいることを祈る。




