白馬編9
1月、2月のコルチナ国際スキー場の雪は深い。
毎朝、駐車場は真っ平。
セダンの車の上に、車と同じ厚みの雪が積もる。
だから、朝出る人はポールを立てておく必要がある。
雪かきが大変なのと、夜の雪道がまだ怖かった僕は、相変わらずアルバイト部屋で呑んでいた。
リフト係初期の頃は、第5リフトと言って、ゲレンデの中央にあるメインリフトの係だった。
ここは、忙しい時は4人体制で、
1人は表で、切符切り係(今はもう電子化されているゲレンデか多いが)1日券の確認。
1人はステージならしと、乗車ヘルプ
1人は操縦室で緊急ボタン係
1人は計器類のチェック
そして、このそれぞれの係りを15分交代でやる。
外が寒すぎるから、15分が丁度いい。
これが暇な時は表に出るのは1人だから、正月と土日以外は、表に出る人以外は、ほぼ休憩。
ストーブの前で、ココアを飲みながら、女の話か、音楽の話、または株の話などしていた。
何かあったらすぐ緊急停止ボタンを押さなきゃいけないけど、滅多にないから、とても暇。
メインリフトには、地元の老人と人気のあるアイドルバイトしか居ない。
あとはパトロールのお偉いサンがちょこちょこ休憩に来る。
なんてチョロい職場なんだと思った。
だから、毎日二日酔いでも全然大丈夫だった。
でもあるとき、やらかしてしまった。
それが、僕である。
暇すぎて、筋トレがてらスノーダンプで雪かきをしながら、ふざけていたら、帰ってくるリフトに引っ掛かり、脱索させてしまったのだ。
脱索というのは、リフトを吊ってるワイヤーロープを動かす、索輪というリールみたいな物から、ロープを外してしまう事。
するとリフトは、落っこちてしまうので緊急停止。
リフトに乗っている人は中吊のまま、ロープを索輪に戻すまで動けない。
とても緊急事態!!
あまり長い時間かかると、人命にもかかわる。
速攻でパトロールと、リフトの偉い人などがデッカイ器具を持ってきて、復旧作業をする。
僕は何もできず見ているしかなかった・・・・
なんとか20分くらいで、復旧できたが、乗っている人にしたら、凍える寒さの中、本当に悪いことをしたと思った。
リフトはチョロくない。。
パトロールも遊びに来ていると思っていたが、いざという時とはこのことだった。
この時ばかりは、皆さんに本当に気持ちから謝罪した。
が、
相変わらず飲み会は毎日だった。
僕らの飲み会も、女子が多くなってきて、何となくペアになる雰囲気だった。
昔でいうツーショットというやつ。
僕も、いい女のコを見つけてしまった。
レストランバイトの高橋姉さんが連れて来た、姉さん曰く「天然巨乳女子」
風呂で転んだ時に、おっぱいが守ってくれたというエピソードに僕が反応してしまった。
一度そういう発言をすると、すぐくっつけたがるのが、こういう場所の特徴で、プライベートも、仕事も全て一緒のところだと、違う女子に乗り換えが難しい。
そう考えると、あの牧野さんはすげぇ達人だなと思った。
その女の子は「春ちゃん」と言った。
春ちゃんは何も言わず、いつも隣にいてくれた。
だから何となく好きになってきた。
というか、おっぱいを触りたかった。
そんな飲み会では、チーズの「kiri」と焼酎が流行っていた。
どうでもいいけど。
僕らの飲み会も、そろそろ動く時が来た。
小谷駅の脇に田舎の風景に溶け込めていない、どぎついラスタカラーのreggae barがある。
そこでは、何かあるとパーティーが開かれていて、そこに呼ばれたのだ。
このbarを知った時には、嬉しかった。
車で下山しないといけないけど、とても興味があったし、何よりも、このbarの近くには、第一ロッジといって、のもう一つの寮
「ブラジル人寮」があった。
そこのブラジル人たちが、頻繁にパーティーをしている。
主にリフト係の人間が主体となっていることもあり、絶対に行ってみたと思った。
今まで知らなかったもう一つの白馬の世界が開こうとしていた。




