白馬編8
究極の人物
それは牧野さんと言って、同じ社員寮にいた。
社員寮で呑むことはほぼ無かったので、社員の人の情報はあまり知らなかった。
アルバイト寮へ飲みに行った時に、とある女子が話し出した。
「私、牧野さんの彼女なんですが、他にも彼女が居るらしくて・・・」
その子は「斎藤さん」といって、背が小さくお世辞にも可愛いとは言えない部類の女で、
「何言ってんのこいつ」
と思っていました。
よくよく皆の話を聞いてみると、牧野さんはイケメンで、ホテルのレストラン勤務で、軽井沢からやってきたらしい。
そして、同じホテルのレストランの美人女子社員と付き合っているとのこと。
この時はどこにでもいるいけ好かない野郎の話だと思って聞いていましたが、後日飲み会で、詐欺男「中沢」が牧野さんをアルバイト寮へ連れて来た。
僕はこの時が牧野さんとは初対面だった。
確かに浅黒くてカッコいい。
背も高いし・・・勝てるところがないな。
と思った。
彼は僕より年上の25歳で、同期にあたるのだが、軽井沢では幹部候補生だった。
そして、シュッとしている為レストラン勤務。
軽井沢のレストランの人間と話すのは初めてだったので、色々と話した。
そこで彼の素性が色々解った。
彼は、ハイエースを所有していて「動くホテル」と言われていた。
レストランの美人社員と付き合っていながらにして、毎晩のように、その「動くホテル」に違う女が吸い込まれていくのだ。
(真偽は、斎藤さん以外にこの後沢山の「被害者=彼女」が出てきて判明したのだが。)
しかも、被害者=彼女には共通点がある。
可愛くないこと
背が小さいこと
ぽっちゃりしていること
この3つだ。
言わば性癖である。
牧野さん曰く、
「こういうところではハイエースが一番役に立つよ。色々な意味で」
深い・・・・
と思った。
山では、
「誰と誰が付き合っている」
「誰と誰が、ヤッた」
など、噂は即広がり、そういう性に対して貪欲な人間は、最後には駆逐されるのが落ちなのだが、
牧野さんは、皆と「付き合う」という手段と、関係する相手が誰とも競合しない事、そして、武器の「動くホテル」を使い巧妙に、その痕跡を消して、生き残っていた。
こいつはすげぇ奴だ。
それだけを求めて生きているまさに「究極」の部類の人間だと思った。
でも、尊敬ということには値しなかったので、ある意味
「病気の人」
として見ていた。
白馬の生活では余り関わることは無かったが、
この牧野さん、後に何度か
思いもよらないところで僕の前に現ることになる。
人間関係って不思議。




