仮帰宅東京編-6(最終話)
アフリカ近辺でパーキングを見つけるのに手間取った。
そして高い・・・
群馬ならタダなのに・・・
とか思いながら、段々と都会のお洒落さと無機質な人間たちに嫌悪感が生まれてきた。
何故か解らない。
この頃、既に山の緑に囲まれた生活が心地よくなっていたのかもしれない。
そんな思いで待ち合わせのアフリカに向かった。
先ずはビールで乾杯
この時は飲酒運転はまだ大丈夫な時代だったと記憶している。
そして、シーザーサラダを頼むと、レタスを半分にカットしただけのヤツに、ドレッシングと粉チーズがかかって、結構なお値段がした覚えがある。
田舎者の来るとこじゃねぇって言われている気がした。
音楽はラテンな感じでいいムードで、ナオミは楽しそうだった。
少し飲んで、考えた。
やっぱり言えない・・・
フル回転させながら、考えた結果
「今度の現場が白馬で20日から出向に行かなきゃいけなくなったんだ」
という本当と嘘を混ぜた。
あたかも先ほど辞令がおりました的な言い方をした。
ナオミの反応は微妙な表情だった。
楽しいデートに水を差されたような、何とも言えない表情だった。
申し訳なくて仕方が無かった。
この日は飲むことにした。
全てを酒で流してしまおうと思った。車だけど、どっかにおいていけばいいやと思った。
それから色々な店にいって、最後は家の近くで別れた。
全てがうやむやになった
「じゃあまたね」
だった。
この後、二度と会うことは無かった。
ナオミも俺が付いた嘘なんて解っていたとおもう。
嘘ついて逃げている最低の男だったと思われても仕方がない。
この時本気で、泣きそうなほど山へ戻って行くのが嫌になった。
あれだけ心地よく感じていた山生活が一気に嫌になった。
心底落ち着いた生活がしたいと思ったが・・・
時は来た。
19日になると白馬の用意を始めた。
この時のお気に入りのlib tech のスノーボードにベースワックスをかけ、ブーツはまだair walkだった。この遊ぶ気満々のセットと
生活用具一式をセフィーロへ積み、昼から寝て、夜中3時には出発。
真冬の夜中に出発する息子に実家の母が
「行ってらっしゃい」
と言いに来た。
気合が入った。
カーステレオに自作のmictapeを入れ、hiphopガンガンで出発。
この時はこれから始まる生活にワクワクしていた。
「俺って単純だなー」
21歳男子ってそんなもの




