軽井沢編-12
鈴木がキレた。
「そういうのうぜーから!!・・・」
うぜーって・・
高校生用語かと思ったが、あんなに穏やかだった鈴木が初めて切れた。
飲み会の席で、いつものように先に帰ろうとすると、
「私も一緒に帰る」
と言ったので、
「いやいや、ユミちゃんはもう少し残りなよ。ね。」
実はこの前日に僕は鈴木に確かめていた。
本当は石川さんとはどうなのかと。
すると
「本当は好きかもしれないけど、解らない」
なるほど。
なにがなるほどなのか解らなかったけど、この時の僕の脳では「なるほど」だったのだ。
だから、やっぱり石川さんと、二人きりで話したり、体の関係を持った方がいいと思っていた。
そしてら
鈴木がキレて、今度は泣き出した。
よく解らない女だなと思った。
22歳の僕はこういう女の子の不安定になる気持ちが全く理解できなかったから、もてなかったのだ。
そして、後日
東京本社からいよいよ石川さんの本彼女がやってきた。
その彼女はレイクサイトという空きスペースでTPが経営するレストランのヘルプに2週間の滞在で来ていた。
さすが、パラサイト会社。
そんな言葉は無いのかもしれないけど。
空きスペースを見つけては、賃料を格安または、無料かもしれない価格で、借り様様な商売を始めるのだ。
そして従業員は、現在軽井沢おもちゃ王国に派遣しているスタッフ3名と、東京からのヘルプのみ。
要は、田中、鎌田、石川は社員という名の奴隷契約
ただでさえ激務なのに、ダブルワークさせられていたのだ。
鎌田は遊園地が終わって、遊園地の残業して、それからTPの経営するレストランで、ふらふらになって働いていた。
これをうまく逃げていたのが、石川さんだったが、ほかの二人は寝る時間もほぼ無かった。
まさにブラック企業。
この時に解るのだが
TPは時給が900円 僕ら自社スタッフのアルバイトは850円
会社からTPへ払う金額は1200円
TPは家賃、食事代全て無料。
スタッフが足りないわけじゃないのに、どう考えてもおかしい。
だからと言って、従業員同士は仲がいいので、そのことに触れることはタブーだった。
そのレイクサイドのレストランに石川さんに呼ばれたのが
僕、ハリオ、鈴木だった。
なぜ?
と思ったが、意図は解らないが、石川さんの作戦臭かった・・・・
が見事に、失敗。
彼女様が鈴木をみて、ボトルワインをテーブルに叩きつけた。
石川さんは取り繕っていたが、みんな興ざめして解散。
この瞬間ですべてがめくれて、僕らの仲はバラバラになった。




